当社は、「遺伝子治療などの革新的なバイオ技術の開発を通じて、人々の健康に貢献する」ことを企業理念として、当社の基幹技術であるバイオテクノロジーを活用し、安定収益基盤である「遺伝子工学研究事業」、第2の収益事業化を目指す「医食品バイオ事業」、成長基盤である「遺伝子医療事業」の3つの事業を推進しています。
本中期経営計画(2012年4月から2015年3月末まで)では、2014年度のタカラバイオグループ連結売上高236億円の達成及び研究開発費の増加を吸収して営業利益18億円への利益拡大を目指します。


「遺伝子工学研究事業」では、市場の伸びが期待できるリアルタイムPCRや細胞生物学分野へ積極的に新製品・サービスを提供することで事業の拡大を図ります。「医食品バイオ事業」では、健康食品素材やキノコの売上拡大により、2012年度の営業黒字化を目指します。「遺伝子医療事業」においては、遺伝子治療・細胞医療の臨床開発を積極的に推進するとともに、当社の保有する技術・ノウハウを利用したバイオ医薬品等の創薬支援事業の強化を図り、売上の拡大も目指します。



1. 業績目標



連結業績目標                                   (単位:百万円)

  2012年度 2013年度 2014年度
売   上   高 21,100 22,700 23,600
営 業 利 益 1,600 1,700 1,800
経 常 利 益 1,850 1,900 2,000
当期純利益 1,100 1,200 1,300
研究開発費 3,083 3,533 4,085



セグメント別売上高                                (単位:百万円)

  2012年度 2013年度 2014年度
研究用試薬
理化学機器
受託
その他
12,630
2,537
2,050
303
13,485
2,548
2,150
283
14,059
2,551
2,250
249
遺伝子工学研究 計 17,522 18,467 19,110
遺伝子医療 1,016 1,597 1,797
健康食品
キノコ
667
1,893
687
1,963
707
1,984
医食品バイオ 計 2,561 2,651 2,691
売上高 合計 21,100 22,700 23,600



セグメント別営業利益                              (単位:百万円)

  2012年度 2013年度 2014年度
遺伝子工学研究 4,694 4,947 5,283
遺伝子医療 ▲1,332 ▲1,515 ▲1,793
医食品バイオ 0 65 112
共通 ▲1,762 ▲1,796 ▲1,801
営業利益 合計 1,600 1,700 1,800



セグメント別研究開発費                             (単位:百万円)

  2012年度 2013年度 2014年度
遺伝子工学研究 911 949 982
遺伝子医療 1,589 2,001 2,521
医食品バイオ 174 174 174
共通 408 408 408
研究開発費 合計 3,083 3,533 4,085



2. 事業別施策
 

「遺伝子工学研究」、「遺伝子医療」、「医食品バイオ」の3つの事業に照準を合わせ、継続的に黒字を計上する一方で、経営資源投下について選択と集中を図り事業構造の改革を進め、成長基盤の構築を目指すため、以下に掲げる事業を展開していきます。

 

(1) 遺伝子工学研究事業

大学や企業などの世界のバイオ研究者向けに研究用試薬・理化学機器の販売や研究受託サービスを行う当事業は、当社の収益基盤であるコアビジネスとして位置づけています。さらなる強化を図るため、基礎研究支援から創薬・産業支援へとその領域を広げながら、次のような事業展開を積極的に進めます。

 

  • リアルタイムPCR分野、細胞生物学分野等における新製品開発・売上拡大
  • 次世代シーケンシング関連技術開発及び受託サービスの売上拡大
  • PCRの応用領域であるApplied Field(食品分析、環境分析、分子診断等)における製品開発の強化とアジアでの積極的な事業展開
  • 研究開発の生産性の向上による製品開発力の強化(タカラバイオ、クロンテック、宝生物工程(大連)の3極体制)
  • 技術的に補完関係のある企業との提携の推進

 

(2) 遺伝子医療事業

遺伝子治療の商業化をめざし、臨床開発を積極的に推進します。また、当社の保有する技術・ノウハウを利用したバイオ医薬品等の創薬支援事業(創薬バイオテクノロジー)の強化を図り、売上拡大を目指します。

 

【遺伝子治療】

  • 白血病を対象としたHSV-TK遺伝子治療の臨床開発の推進(目標:2017年度の商業化)
  • 腫瘍溶解性ウイルスHF10の米国での臨床開発の推進(目標:2018年度の商業化)
  • MazFを利用したエイズ遺伝子治療法の米国での臨床開発の推進(目標:2022年度の商業化)
  • がんを対象としたTCR遺伝子治療の臨床開発の推進(目標:2013年度の臨床試験開始)
  • バイオ医薬品の臨床開発支援事業(遺伝子治療用ベクター製造、バイオ医薬品の安全性試験受託サービス等)の拡大

 

【細胞医療】
エビデンス強化のためのがん免疫細胞療法の臨床開発を推進するとともに、以下のような細胞医療事業を推進します。

 

  • ナチュラルキラー(NK)細胞療法の臨床開発の推進
  • レトロネクチン®誘導Tリンパ球療法(RIT)等のエビデンスデータの取得並びに技術支援サービスの売上拡大
  • がん免疫細胞療法用の細胞培養用培地・バッグ等の売上拡大

 

(3) 医食品バイオ事業

機能性食品素材の開発を中心とした健康食品やキノコに関する次のような事業を積極的に展開します。

 

  • ガゴメ昆布「フコイダン」、寒天「アガロオリゴ糖」、明日葉「カルコン」、ヤムイモ「ヤムスゲニン®」、ボタンボウフウ「イソサミジン」、きのこ「テルペン」などの機能性成分を応用した健康食品素材のヒト試験でのエビデンス強化等によるB to B市場での売上拡大
  • 機能性食品素材を用いた基礎的・臨床的データ取得(エビデンスデータ)を目指した医学系アカデミアとの共同研究の推進
  • 安全・安心な製品を提供するための、品質管理・品質保証体制の強化
  • ハタケシメジ、ホンシメジのロジスティクス体制の強化と売上拡大
  • キノコ栽培技術・ノウハウのライセンス事業の拡大

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

 

【語句説明】

 

リアルタイムPCR法

従来のPCR法は、サーマルサイクラーという機器で目的DNAを増幅した後、増幅産物を電気泳動で解析するという手順で行われています。リアルタイムPCR法では、サーマルサイクラーと分光蛍光光度計を一体化した機器を用いて、PCRでのDNA増幅産物の生成過程をリアルタイム(実時間)で検出し、解析できます。DNA増幅産物の生成の過程を連続して観察できるため、より正確な定量が可能となります。また電気泳動を行う必要がないため、解析時間の大幅な短縮が可能となります。

 

PCR法

Polymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)の略称です。温度サイクル装置(サーマルサイクラー)を使用し、微量のDNAを数時間のうちに数百万倍にまで増幅する技術です。

 

次世代シークエンシング

次世代シーケンサー(高速シーケンサー)と呼ばれる、数百万から数億個の塩基配列データを並列に大量取得することができる装置を用いた塩基配列解析です。当社では、ロシュ社、イルミナ社が販売する次世代シーケンサーを導入して、受託解析サービスを提供しています。今後も新技術の登場が見込まれている分野です。

 

Applied Field

PCR、リアルタイムPCR技術の応用領域の意味で、食品の品質検査のための病原性細菌等の検査、水質汚染等の環境分析、ヒトゲノムの定量や分子診断等の分野を指します。

 

HSV-TK遺伝子治療

当社は、イタリアのMolMed社よりライセンスを受け、国内で白血病を対象にして、国立がん研究センターにおいて、HSV-TK遺伝子治療の第Ⅰ相臨床試験を実施しています。

現在、ドナーリンパ球輸注(DLI)療法が行われていますが、副作用として生じる移植片対宿主病(GVHD)が重大な問題となっています。このGVHDを沈静化する手段を備えたDLI療法により再発造血器悪性腫瘍の治療を試みるものであり、レトロウイルスベクターを用いてHSV-TK遺伝子が導入されたドナー由来リンパ球が被験者に投与されます。GVHDが発症した際には、ガンシクロビルという薬剤を投与し、導入されたHSV-TK遺伝子の働きによってドナー由来のリンパ球のみを消滅させ、GVHDの沈静化を図ります。

 

TCR遺伝子治療

TCR遺伝子治療は、がん患者の血液から採取したリンパ球に、がん細胞を特異的に認識するTCR遺伝子を体外において導入し、培養によって増殖させてから患者に戻すという治療法です。TCR遺伝子が導入されたリンパ球が、患者の体内においてがん細胞のみを認識して攻撃し、消滅させることが期待されます。

 

TCR(T細胞受容体)

T細胞に発現される糖タンパク質で、T細胞が抗原を認識する際の受容体です。腫瘍抗原を含む抗原は細胞内で分解されてペプチドとなり、HLA分子上に提示されます。TCRは、特定の型のHLAにより提示された特定の抗原を認識し、T細胞を活性化します。

 

MazF

大腸菌由来のRNA分解酵素で、メッセンジャーRNA(mRNA)のACAの塩基配列を認識し、mRNAを切断します。当社では、エイズウイルスが複製するときにのみMazFタンパク質が発現しエイズウイルスRNAを切断する仕組みを開発し、エイズウイルス感染症に対する遺伝子治療法の開発を進めています。

 

腫瘍溶解性ウイルス

腫瘍溶解性ウイルスとは、正常な細胞内ではほとんど増殖せず、がん細胞内において特異的に増殖するウイルスです。増殖によって直接的にがん細胞を破壊し、さらにその際に放出されたウイルスが周囲のがん細胞に感染すること、また、がんに対する宿主の免疫を活性化することで、がん全体を縮小することが期待されます。

 

HF10

HF10は、単純ヘルペスウイルス1型の弱毒型自然変異株であり、がん細胞に感染すると細胞内で増殖し、がん細胞を死滅させる作用を有することが動物実験などにおいて示されています。当社では、米国において固形がんを対象として第Ⅰ相臨床試験を実施しています。

 

ナチュラルキラー細胞(NK細胞)

NK細胞は、末梢血中に10~20%の割合で存在するリンパ球の一種で、ウイルスによる感染やがん細胞に対する初期防御機構としての働きを担っています。加齢やストレスなどによりNK細胞の活性が低下することが知られており、高齢化に伴うがん発症の原因の1つと考えられています。

 

レトロネクチン®

レトロネクチン®は、当社が開発したヒトフィブロネクチンと呼ばれる分子を改良した組換えタンパク質です。レトロネクチン®を用いたレトロウイルスベクターによる遺伝子導入法は、レトロネクチン法として知られており、レトロウイルスベクターによる遺伝子治療の臨床研究のスタンダードとなっています。さらに、当社はレトロネクチン®の新たな機能として、リンパ球の培養を増強する効果を発見し、レトロネクチン®を用いたがん免疫細胞療法の臨床応用を進めています。

 

レトロネクチン®誘導Tリンパ球療法

当社が開発したレトロネクチン®拡大培養法により得られたナイーブT細胞を多く含む細胞を投与する治療法です。レトロネクチン®拡大培養法は、ヒトリンパ球の拡大培養の際に、インターロイキン2および抗CD3モノクローナル抗体に加え、ヒトフィブロネクチンを改良した組換えタンパク質である、レトロネクチン®を併用するものです。当社は、レトロネクチン®拡大培養法によって効率よくリンパ球を増殖させることができ、さらに得られた細胞集団に、生体内での生存能力が高く、抗原認識能も高いナイーブT細胞が多く含まれていることを確認しています。

 

フコイダン

昆布、ワカメ、モズクなど、褐藻類の海藻のぬめり成分で、硫酸化されたフコースを構成成分とする多糖の総称です。ガゴメ昆布には乾燥重量の約5%と豊富にフコイダンが含まれています。当社は北海道の函館近海に生育するガゴメ昆布に注目し、1995年にフコイダンの化学構造を世界で初めて明らかにしました。その結果、ガゴメ昆布が他の海藻に見られないF-フコイダン、U-フコイダン、G-フコイダンを含むことを解明しています。

 

寒天アガロオリゴ糖

寒天の主成分であるアガロースを酸分解することによって得られる2糖~8糖のオリゴ糖で、ガラクトースと3,6-アンハイドロガラクトースが交互に繋がった構造を有します。当社では、培養細胞を用いた実験において、寒天アガロオリゴ糖が、組織の炎症に関わる一酸化窒素やプロスタグランジンE2、炎症性サイトカインの産生を抑制し、寒天オリゴ糖を経口投与した動物実験で関節炎やアトピー性皮膚炎などを抑制することを既に明らかにしています。

 

明日葉カルコン

明日葉に特徴的に含まれるポリフェノール系成分です。明日葉にはキサントアンゲロールと4-ハイドロキシデリシンの2種類のカルコンが豊富に含まれており、これらを総称して明日葉カルコンと呼びます。

 

きのこテルペン

白楡木茸(しろたもぎたけ)属キノコのある種のブナシメジに含まれる苦味成分の一つであり、一般の食用キノコにはほとんど含まれません。テルペンとは、植物に広く存在するイソプレン構造を基本とする物質の総称で、例えばトマトの健康成分リコペンもその一つです。

 

ヤムスゲニン®

ジオスゲニンは、ヤマノイモ科やユリ科の植物に含まれるステロイドで、様々な生理活性を有するといわれています。当社では、「ヤムイモ由来のジオスゲニン配糖体」を「ヤムスゲニン®」と命名し、様々な機能性の研究を進めております。

 

ボタンボウフウ

ボタンボウフウ(牡丹防風)は日本では本州以西から沖縄までの海岸沿いに生育するセリ科の植物で、学名をPeucedanum japonicumといいます。沖縄では別名、長命草やサクナと呼ばれています。屋久島産ボタンボウフウには、有用成分であるイソサミジンが含まれており、当社では様々な機能性の研究を進めております。