タカラバイオ株式会社では、2011年4月から2014年3月末までのタカラバイオグループの中期経営計画を策定しました。
当社は、「遺伝子治療などの革新的なバイオ技術の開発を通じて、人々の健康に貢献する」ことを企業理念として、当社の基幹技術であるバイオテクノロジーを活用し、安定収益基盤である「遺伝子工学研究事業」、第2の収益事業化を目指す「医食品バイオ事業」、成長基盤である「遺伝子医療事業」の3つの事業を推進しています。
本中期経営計画では、2013年度のタカラバイオグループ連結売上高227億円の達成及び研究開発費の増加を吸収して営業利益13億円への利益拡大を目指します。初年度である2011年度は、営業利益、経常利益、純利益とも過去最高益を、2012年、2013年は、過去最高の売上高及び利益を目指します。
「遺伝子工学研究事業」では、市場の伸びが期待できるリアルタイムPCRや細胞生物学分野へ積極的に新製品・サービスを提供することで事業の拡大を図ります。「医食品バイオ事業」では、健康志向食品やキノコの売上増加及び効果・効率的な費用投下により、2011年度の営業黒字化を目指します。「遺伝子医療事業」においては、遺伝子治療・細胞医療の研究開発を積極的に推進するとともに、売上の拡大も目指します。



1. 業績目標


連結業績目標                                   (単位:百万円)

  2011年度 2012年度 2013年度
売 上 高 19,800 21,200 22,700
営 業 利 益 1,100 1,200 1,300
経 常 利 益 1,300 1,350 1,400
当期純利益 680 780 830
研究開発費 3,072 3,498 4,117

 

セグメント別売上高                                (単位:百万円)

  2011年度 2012年度 2013年度
研究用試薬
理化学機器
受託
その他
11,934
2,582
1,796
341
12,762
2,582
1,896
390
13,504
2,590
1,996
390
遺伝子工学研究 計 16,655 17,632 18,482
遺伝子医療 648 971 1,533
健康食品
キノコ
595
1,901
650
1,946
717
1,968
医食品バイオ 計 2,496 2,596 2,685
売上高 合計 19,800 21,200 22,700
(注) 遺伝子工学研究セグメントにおいて品目のくくり直しを行い、約5.7億円の売上を、「その他」から「理化学機器」へ移動させています。

 

セグメント別営業利益                              (単位:百万円)

  2011年度 2012年度 2013年度
遺伝子工学研究 4,230 4,562 4,910
遺伝子医療 ▲1,614 ▲1,755 ▲2,006
医食品バイオ 27 32 54
共通 ▲1,543 ▲1,638 ▲1,658
営業利益 合計 1,100 1,200 1,300

 

セグメント別研究開発費                             (単位:百万円)

  2011年度 2012年度 2013年度
遺伝子工学研究 882 1,036 1,147
遺伝子医療 1,726 2,001 2,499
医食品バイオ 257 254 256
共通 206 206 214
研究開発費 合計 3,072 3,498 4,117



2. 事業分野別施策

「遺伝子工学研究」、「遺伝子医療」、「医食品バイオ」の3つの事業に照準を合わせ、継続的に黒字を計上する一方で、経営資源投下について選択と集中を図り事業構造の改革を進め、成長基盤の構築を目指すため、以下に掲げる事業を展開していきます。

 

(1) 遺伝子工学研究事業

大学や企業などの世界のバイオ研究者向けに研究用試薬・理化学機器の販売や研究受託サービスを行う当事業は、当社の収益基盤であるコアビジネスとして位置づけていますが、さらなる強化を図るため、次のような事業展開を積極的に進めます。

  • リアルタイムPCR分野、細胞生物学分野等における新製品開発・売上拡大
  • 次世代シークエンシング関連技術開発及び受託サービスの売上拡大
  • 海外での売上拡大(中国・インドでの販売力強化、米国でのeコマースの活用、欧州での代理店網の再編)
  • 研究開発の生産性の向上による基盤技術開発の推進(タカラバイオ、クロンテック、宝生物工程(大連)の3極体制)

 

(2) 遺伝子医療事業

遺伝子治療の商業化をめざし、臨床開発を積極的に推進します。

 

【遺伝子治療】

  • 白血病を対象としたHSV-TK遺伝子治療の臨床開発の推進(目標:2017年度の商業化)
  • がんを対象としたTCR遺伝子治療の臨床開発の推進(目標:2013年度の臨床試験開始)
  • RNA分解酵素MazFを利用したエイズ遺伝子治療法の米国での臨床開発の推進(目標:2011年度の臨床試験開始)
  • 腫瘍溶解性ウイルスHF10の米国での臨床開発の推進(目標:2018年度の商業化)
  • バイオ医薬品等の臨床開発支援事業の拡大(遺伝子治療用ベクター製造等)

 

【細胞医療】
エビデンス強化のためのがん免疫細胞療法の臨床開発を推進するとともに、以下のような細胞医療事業を推進します。

 

  • レトロネクチン®誘導Tリンパ球療法(RIT)の臨床開発の推進
  • ナチュラルキラー(NK)細胞療法の臨床開発の推進
  • RIT等の総合支援サービスの売上拡大
  • がん免疫細胞療法用の細胞培養用培地・バッグ等の売上拡大

 

(3) 医食品バイオ事業

機能性食品素材の開発を中心とした健康志向食品やキノコに関する次のような事業を積極的に展開します。

 

  • ガゴメ昆布「フコイダン」、寒天「アガロオリゴ糖」、明日葉「カルコン」、ヤムイモ「ヤムスゲニン®」、ボタンボウフウ「イソサミジン」、きのこ「テルペン」などの機能性成分を応用した健康志向食品素材のヒト試験でのエビデンス強化等によるB to B市場での売上拡大
  • より安全・安心な製品を提供するための、品質管理・品質保証体制の強化
  • ハタケシメジ、ホンシメジの生産技術向上によるコストダウンと自社販売による売上拡大
  • マツタケゲノムを初めとした遺伝子情報などを活用した高付加価値キノコの新規栽培法の確立
  • キノコ栽培技術・ノウハウのライセンス事業の拡大

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

 

【語句説明】

 

リアルタイムPCR法
従来のPCR法は、サーマルサイクラーという機器で目的DNAを増幅した後、増幅産物を電気泳動で解析するという手順で行われています。リアルタイムPCR法では、サーマルサイクラーと分光蛍光光度計を一体化した機器を用いて、PCRでのDNA増幅産物の生成過程をリアルタイム(実時間)で検出し、解析できます。DNA増幅産物の生成の過程を連続して観察できるため、より正確な定量が可能となります。また電気泳動を行う必要がないため、解析時間の大幅な短縮が可能となります。

PCR法
Polymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)の略称です。温度サイクル装置(サーマルサイクラー)を使用し、微量のDNAを数時間のうちに数百万倍にまで増幅する技術です。

次世代シークエンシング
次世代シーケンサー(高速シーケンサー)と呼ばれる、数百万から数億個の塩基配列データを並列に大量取得することができる装置を用いた塩基配列解析です。当社では、ロシュ社、イルミナ社、ライフテクノロジーズ社が販売する3種類の次世代シーケンサーを導入して、受託解析サービスを提供しています。

HSV-TK遺伝子治療
当社は、イタリアのMolMed社よりライセンスを受け、国内で白血病を対象にしてHSV-TK遺伝子治療(1. ドナーリンパ球輸注療法、2. ハプロAdd-back)の臨床開発を進めています。

  1. ドナーリンパ球輸注(DLI)療法:同種造血幹細胞移植後に再発した白血病など造血器悪性腫瘍の患者に対して、DLI療法が行われていますが、副作用として生じる移植片対宿主病(GVHD)が重大な問題となっています。このGVHDを沈静化する手段を備えたDLI療法により再発造血器悪性腫瘍の治療を試みるものであり、レトロウイルスベクターを用いてHSV-TK遺伝子が導入されたドナー由来リンパ球が被験者に投与されます。GVHDが発症した際には、ガンシクロビルという薬剤を投与し、導入されたHSV-TK遺伝子の働きによってドナー由来のリンパ球のみを消滅させ、GVHDの沈静化を図ります。
  2. ハプロAdd-back:高リスク造血器悪性腫瘍患者にハプロタイプ一致造血幹細胞移植を行ったあと、感染症をはじめとした造血幹細胞移植の合併症を軽減しつつ重篤な移植片対宿主病(GVHD)が発症した時の沈静化の手段として、HSV-TK遺伝子導入ドナーリンパ球を追加輸注(Add-back)するというものです。これにより、適切なドナーが見つからないため、造血幹細胞移植を行えない造血器悪性腫瘍患者に新たな治療法が提供できると期待されます。

 

TCR遺伝子治療
TCR遺伝子治療は、がん患者の血液から採取したリンパ球に、がん細胞を特異的に認識するTCR遺伝子を体外において導入し、培養によって増殖させてから患者に戻すという治療法です。TCR遺伝子が導入されたリンパ球が、患者の体内においてがん細胞のみを認識して攻撃し、消滅させることが期待されます。

TCR(T細胞受容体)
T細胞に発現される糖タンパク質で、T細胞が抗原を認識する際の受容体です。腫瘍抗原を含む抗原は細胞内で分解されてペプチドとなり、HLA分子上に提示されます。TCRは、特定の型のHLAにより提示された特定の抗原を認識し、T細胞を活性化します。

RNA分解酵素
mRNAの特定の配列を特異的に認識して切断する酵素で、当社はこれらをRNA分解酵素と呼んでいます。MazFは、大腸菌由来の酵素で、mRNAのACAの塩基配列を認識し、切断します。

腫瘍溶解性ウイルス
腫瘍溶解性ウイルスとは、正常な細胞内ではほとんど増殖せず、がん細胞内において特異的に増殖するウイルスです。増殖によって直接的にがん細胞を破壊し、さらにその際に放出されたウイルスが周囲のがん細胞に感染すること、また、がんに対する宿主の免疫を活性化することで、がん全体を縮小することが期待されます。

HF10
HF10は、単純ヘルペスウイルス1型の弱毒型自然変異株であり、がん細胞に感染すると細胞内で増殖し、がん細胞を死滅させる作用を有することが動物実験などにおいて示されています。名古屋大学医学部附属病院において、乳がん、頭頸部がんおよび膵臓がんの患者を対象としたHF10の臨床研究が実施されており、その安全性と有効性を示唆する結果が報告されています。

レトロネクチン®
レトロネクチン®は、当社が開発したヒトフィブロネクチンと呼ばれる分子を改良した組換えタンパク質です。レトロネクチン®を用いたレトロウイルスベクターによる遺伝子導入法は、レトロネクチン法として知られており、レトロウイルスベクターによる遺伝子治療の臨床研究のスタンダードとなっています。さらに、当社はレトロネクチン®の新たな機能として、リンパ球の培養を増強する効果を発見し、レトロネクチン®を用いたがん免疫細胞療法の臨床応用を進めています。

ナチュラルキラー細胞(NK細胞)
NK細胞は、末梢血中に10~20%の割合で存在するリンパ球の一種で、ウイルスによる感染やがん細胞に対する初期防御機構としての働きを担っています。加齢やストレスなどによりNK細胞の活性が低下することが知られており、高齢化に伴うがん発症の原因の1つと考えられています。

フコイダン
昆布、ワカメ、モズクなど、褐藻類の海藻のぬめり成分で、硫酸化されたフコースを構成成分とする多糖の総称です。ガゴメ昆布には乾燥重量の約5%と豊富にフコイダンが含まれています。当社は北海道の函館近海に生育するガゴメ昆布に注目し、1995年にフコイダンの化学構造を世界で初めて明らかにしました。その結果、ガゴメ昆布が他の海藻に見られないF-フコイダン、U-フコイダン、G-フコイダンを含むことを解明しています。

寒天アガロオリゴ糖
寒天の主成分であるアガロースを酸分解することによって得られる2糖~8糖のオリゴ糖で、ガラクトースと3,6-アンハイドロガラクトースが交互に繋がった構造を有します。当社では、培養細胞を用いた実験において、寒天アガロオリゴ糖が、組織の炎症に関わる一酸化窒素やプロスタグランジンE2、炎症性サイトカインの産生を抑制し、寒天オリゴ糖を経口投与した動物実験で関節炎やアトピー性皮膚炎などを抑制することを既に明らかにしています。

明日葉カルコン
明日葉に特徴的に含まれるポリフェノール系成分です。明日葉にはキサントアンゲロールと4-ハイドロキシデリシンの2種類のカルコンが豊富に含まれており、これらを総称して明日葉カルコンと呼びます。

きのこテルペン
白楡木茸(しろたもぎたけ)属キノコのある種のブナシメジに含まれる苦味成分の一つであり、一般の食用キノコにはほとんど含まれません。テルペンとは、植物に広く存在するイソプレン構造を基本とする物質の総称で、例えばトマトの健康成分リコペンもその一つです。

ヤムスゲニン®
ジオスゲニンは、ヤマノイモ科やユリ科の植物に含まれるステロイドで、様々な生理活性を有するといわれています。当社では、「ヤムイモ由来のジオスゲニン配糖体」を「ヤムスゲニン®」と命名し、様々な機能性の研究を進めております。

ボタンボウフウ
ボタンボウフウ(牡丹防風)は日本では本州以西から沖縄までの海岸沿いに生育するセリ科の植物で、学名をPeucedanum japonicumといいます。沖縄では別名、長命草やサクナと呼ばれています。屋久島産ボタンボウフウには、有用成分であるイソサミジンが含まれており、当社では様々な機能性の研究を進めております。