タカラバイオ株式会社は、滑膜肉腫患者を対象としたsiTCR遺伝子治療(NY-ESO-1・siTCR遺伝子治療;開発コード:TBI-1301)の第I/II相臨床試験を日本国内で実施するため、本日、医薬品医療機器総合機構(PMDA)に再生医療等製品としての治験計画届を提出しましたのでお知らせいたします。
 
本試験では、癌抗原であるNY-ESO-1抗原を認識するTCRの遺伝子を被験者のリンパ球に体外で導入し、その遺伝子導入細胞を被験者に投与した際の安全性や有効性等の評価を行います。また、本試験においては当社が開発したレトロネクチンsup{®}遺伝子導入法やレトロネクチンsup{®}拡大培養法、および三重大学のグループと共同開発したTCR遺伝子導入用レトロウイルスベクター(siTCRベクター)が使用されます。
 
今後、PMDAによる治験計画届の受理後、試験実施施設の治験審査委員会による審査を経て、被験者登録・投与を開始いたします。
 
当社は、既にカナダにおいて固形癌を対象としたNY-ESO-1・siTCR遺伝子治療の第I b相臨床試験を開始しております。国内およびカナダでの臨床試験により、NY-ESO-1・siTCR遺伝子治療の安全性や有効性等のデータを取得し、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機器等法)において再生医療等製品に適用される制度(条件及び期限付承認制度)などを活用してNY-ESO-1・siTCR遺伝子治療の早期承認を目指し、日本国内で平成32年度に商業化することを目標としています。
 
 
<参考>
当社平成28年8月8日ニュースリリース
「NY-ESO-1・siTCR遺伝子治療のカナダにおける臨床試験開始のお知らせ」
http://www.takara-bio.co.jp/release/?p=3446

【本試験の概要】

治験課題名:
化学療法剤投与による前処置後のNY-ESO-1抗原特異的TCR遺伝子導入Tリンパ球輸注による滑膜肉腫を対象とした
多施設共同第I/II相治験
 
対象患者:外科的切除が不能な進行又は再発滑膜肉腫患者
 
主要評価項目:第I相臨床試験期 安全性、第II相臨床試験期 有効性
 
目標症例数:8例
 
試験期間:平成29年3月~平成32年1月
 
実施施設:三重大学、大阪医療センター他、全5施設(予定)

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

【語句説明】

NY-ESO-1
NY-ESO-1は、癌抗原の一つで、滑膜肉腫、悪性黒色腫、食道癌、卵巣癌、多発性骨髄腫、頭頸部癌などで発現が確認されています。
 

癌抗原
免疫細胞が癌細胞と正常細胞を見分けるための目印になるもので、癌細胞に特有な抗原を癌抗原といいます。
 

siTCR遺伝子治療
癌患者から採取したリンパ球に、癌細胞を特異的に認識するTCR遺伝子を体外で導入し、培養によって増殖させた後に輸注により患者に戻す治療をTCR遺伝子治療といい、Engineered T cell Therapyの一種です。TCR遺伝子が導入されたリンパ球が、患者の体内において、癌細胞を特異的に認識して攻撃し、消滅させることにより、癌を治療します。siTCRベクター技術を用いたTCR遺伝子治療をsiTCR遺伝子治療と呼んでいます。ターゲットとする癌抗原に合わせたTCR遺伝子を選択することにより、siTCR遺伝子治療は様々な癌種への適用が可能となります。
 

siTCRベクター技術
内在性のTCRの発現をRNA干渉により抑制し、目的とするTCRを発現するTリンパ球がより多く得られる技術で、TCR遺伝子治療の副作用のリスクの低減、有効性の向上につながると考えられます。
 

滑膜肉腫
滑膜肉腫は悪性軟部腫瘍の1つであり、悪性度が高く、局所転移及び遠隔転移を生じる予後不良の疾患です。滑膜肉腫症例ではNY-ESO-1抗原発現率が高く、NY-ESO-1抗原が比較的均一に腫瘍組織全体に発現され、また、細胞あたりの発現量が高いという特徴があります。
 

TCR(T細胞受容体)
Tリンパ球(T細胞)に発現する糖タンパク質で、Tリンパ球が抗原を認識する際に作用します。腫瘍抗原を含む抗原をTCRが認識することにより、Tリンパ球が活性化されます。
 

レトロウイルスベクター
レトロウイルスとは、一本鎖RNAをゲノムとするウイルスの一種で、このウイルスが感染した細胞では、RNAゲノムから合成されたDNAが染色体に組み込まれます。その仕組みを利用して、レトロウイルスを改変させたものが、遺伝子治療の際の遺伝子導入用ベクター(ウイルスベクター)として広く用いられます。
 

レトロネクチンsup{®}
レトロネクチンsup{®}は、当社が開発したヒトフィブロネクチンと呼ばれる分子を改良した組換えタンパク質です。レトロネクチンsup{®}を用いたレトロウイルスベクターによる遺伝子導入法は、レトロネクチンsup{®}遺伝子導入法として知られており、レトロウイルスベクターによる遺伝子治療の臨床研究のスタンダードとなっています。

レトロネクチン拡大培養法sup{®}
レトロネクチンsup{®}拡大培養法は、ヒトリンパ球の拡大培養の際に、インターロイキン2および抗CD3モノクローナル抗体に加え、レトロネクチンsup{®}を併用するものです。当社は、レトロネクチンsup{®}拡大培養法によって効率よくリンパ球を増殖させることができ、さらに得られた細胞集団に、生体内での生存能力が高く、抗原認識能も高いナイーブT細胞が多く含まれていることを確認しています。