タカラバイオ株式会社は、米国ペンシルベニア大学と共同で、HIVを対象としたMazF遺伝子治療の第I相臨床試験を米国において実施するための臨床試験実施申請資料(IND; Investigational New Drug)を2012年3月17日付で米国食品医薬品局(FDA; Food and Drug Administration)に提出しましたのでお知らせいたします。

 

MazF遺伝子治療は、大腸菌由来のRNA分解酵素であるMazFを利用したHIV感染症に対する遺伝子治療法です。当社はMazF遺伝子治療の米国における臨床試験実施を目指し、ペンシルベニア大学医学部のカール・ジューン(Carl June)教授らのグループと共同でIND申請に向けた準備を進めてきましたが、非臨床試験、MazFレトロウイルスベクターのGMP製造、遺伝子導入細胞のGMP製造および申請資料の作成等の一連の準備作業が終了し、今回の申請を実施しました。
当社は今後、FDAによるINDの審査、臨床試験実施施設の治験審査委員会(IRB; Institutional Review Board)による審査などを経て、MazF遺伝子治療の第I相臨床試験を開始する計画です。

 

今回のIND申請実施による当社連結及び単体の平成24年3月期業績への直接的な影響は軽微ですが、当社はMazF遺伝子治療の商業化に向け、引き続き臨床開発を続けていきます。



 

【臨床試験概要(予定)】

 

治験依頼者 タカラバイオ株式会社/ペンシルベニア大学
対象患者 HIV-1陽性の成人男女
評価項目 MazF導入自己CD4陽性T細胞の安全性、忍容性及び免疫原性
患者数 12名
試験期間 3年間
実施施設 ドレクセル大学医学部 感染症/HIV治療部門
クリニカルリサーチセンター(ペンシルベニア州)
(治験責任医師: Jeffrey Jacobson, MD)

 

※ 本試験は、当社とペンシルベニア大学が共同の治験依頼者として実施し、患者の登録等が行われる臨床試験の実施施設はドレクセル大学医学部付属病院となる予定です。 

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

【語句説明】

 

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)

後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因ウイルスです。HIVはレトロウイルス科レンチウイルス属に属します。HIVは変異しやすいウイルスのため、ワクチンや抗HIV薬の開発を阻んでいます。HIVがT細胞などに直接感染することにより、あるいは感染細胞が非感染細胞に融合することにより、体内に広がります。
HIVは血清学的・遺伝学的性状の異なるHIV-1とHIV-2に大別されます。HIV-1は、世界流行の主体となっており、全世界に分布していますが、HIV-2は主に西アフリカ地域に限局しています。これは、HIV-2がHIV-1と比較して感染性や病原性が低いためと考えられています。

 

MazF遺伝子治療

当社は、大腸菌由来のRNA分解酵素であるMazFを用いたHIV遺伝子治療(MazF遺伝子治療)の開発を進めています。当社はこれまでにエイズの原因ウイルス(HIV-1)を用いた培養細胞への感染実験により、MazF遺伝子をヒトT細胞に導入することによって、細胞に対しては毒性を示すことなく、HIV-1の複製のみが効果的に抑制されることを発見しています。また、MazF遺伝子をレトロウイルスベクターにより導入したヒトT細胞に、様々な抗HIV薬が効かなくなった多剤耐性HIV-1株を感染させたところ増殖を抑制できること(鹿児島大学との共同研究)などの有望な結果を示してきました。また、医薬基盤研究所霊長類医科学研究センターと共同で、サルを用いたMazF遺伝子治療の動物試験も実施し、MazF遺伝子を導入した細胞がサル個体に対しても安全であることを確認しています。

 

MazF

ニュージャージー医科歯科大学の井上正順教授は、大腸菌のトキシンのひとつであるMazFが、RNA中のACAの塩基配列を特異的に認識して切断する機能を有する酵素であることを発見しました。

 

レトロウイルスベクター

レトロウイルスとは、一本鎖RNAをゲノムとする約0.1 μmのウイルスで、このウイルスが感染した細胞では、RNAゲノムから合成されたDNAが染色体に組み込まれます。遺伝子治療用ベクターとして、レトロウイルスの一種であるマウス白血病ウイルス(MoMLV:Moloney murine leukemia virus)を特別な細胞の中でのみ増殖できるように改変し、自己増殖能を奪ったものが広く用いられています。このベクターを使用すれば種々の細胞に遺伝子導入を行うことができ、安定した形質発現が期待できます。

 

多剤耐性HIV株

様々な抗HIV薬によって増殖が阻害されなくなったHIVを意味します。

 

GMP

Good Manufacturing Practiceの略で、医薬品を製造する際に遵守すべき「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理規則」を指します。GMPは、安全で品質が担保された医薬品を供給するため、医薬品の製造時の管理、遵守事項を各国の規制当局が定めたものです。