タカラバイオ株式会社と独立行政法人医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センターとは、RNA分解酵素MazFを用いたエイズ遺伝子治療法に関する安全性評価のためのカニクイザルを用いた動物試験を共同で実施してきました。その成果が、学術誌PLoS ONE オンライン版(http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0023585)に8月18日(日本時間)に掲載されましたのでお知らせします。論文のタイトルや研究成果は以下です。

 

1.タイトル
In vivo safety and persistence of endoribonuclease gene-transduced CD4+ T cells in cynomolgus macaques for HIV-1 gene therapy model」
(エイズウイルスHIV-1感染症の遺伝子治療モデルとして、RNA分解酵素遺伝子を導入したカニクイザルCD4陽性リンパ球の生体内での安全性と生着に関する評価)

 

2.MazF遺伝子導入細胞の生着と安全性の確認について
遺伝子治療への展開を目指す上で、生体内に投与されたMazF遺伝子導入細胞が長期間持続し、また、MazF遺伝子導入細胞に対する免疫応答が起こらない、あるいは軽微であることが望まれます。今回のカニクイザルを用いた安全性評価では、MazF遺伝子を導入した自己のCD4陽性リンパ球を3頭のサル個体に自家移植し、半年間にわたる遺伝子導入細胞の追跡とMazFに対する抗体産生の評価を行いました。

 

遺伝子導入細胞は移植後半年間経過した末梢血中においてもCD4陽性リンパ球の3~7%の割合で生着しており、リンパ節組織や脾臓においても生着が確認されました。また、サル個体から採取した血清中にはMazFに対する抗体は検出されませんでした。さらに、各主要臓器の病理診断を行った結果、有害な事象は認められず、移植したMazF遺伝子導入細胞が安全であることが確認されました。

 

3.MazF遺伝子導入細胞の機能保持について

遺伝子導入細胞移植後、半年以上経過したサルからMazF遺伝子導入細胞を分離し、試験管内にてサル/ヒト免疫不全キメラウイルス(SHIV)感染実験を行いました。その結果、MazF遺伝子導入細胞は移植後半年以上経過してもSHIVに対する抵抗性を保持していることが示されました。

 

当社は、今回の安全性評価等の研究成果を米国での臨床試験実施申請(IND; Investigational New Drug)の参考資料として利用し、2011年度の米国での臨床試験開始に向けて準備を進めてまいります。 

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

 

【語句説明】

 

MazF
大腸菌のトキシンのひとつであり、メッセンジャーRNA中のACAの塩基配列を特異的に認識して切断する機能を有するRNA分解酵素です。
 

カニクイザル
体長 50 cm程度で、尾が体長よりやや長いことを特徴とするオナガザル科の哺乳類です。東南アジア・東インドに分布し、実験動物として重要とされ、人工繁殖されています。
 

HIV
後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因ウイルスです。HIVはレトロウイルス科レンチウイルス属に属します。HIVは変異しやすいウイルスのため、ワクチンや抗HIV剤の開発を阻んでいます。HIVがT細胞などに直接感染することにより、あるいは感染細胞が非感染細胞に融合することにより、体内に広がります。 HIVは血清学的・遺伝学的性状の異なるHIV-1とHIV-2に大別されます。HIV-1は、世界流行の主体となっており、全世界に分布していますが、HIV-2は主に西アフリカ地域に限局しています。これは、HIV-2がHIV-1と比較して感染性や病原性が低いためと考えられています。
 

CD4陽性リンパ球
細胞表面マーカーであるCD4が陽性であるT細胞のことです。活性化されたCD4陽性細胞は、他のT細胞の機能を誘導したり、B細胞に抗体産生を誘導したりし、免疫応答を増強します。HIVはCD4陽性T細胞に感染します。
 

生着
生体内に移植した細胞が、新しい場所で身体の一部として生きて機能し続けることです。
 

サル/ヒト免疫不全キメラウイルス(SHIV)
サルを自然宿主とし、サルでエイズを発症するSIVと、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)のキメラウイルスです。アカゲザルやカニクイザルといった医学実験用サルを用いて動物モデル系に利用することが出来るウイルスです。