タカラバイオ株式会社と天津医科大学・天津市腫瘍病院とは、難治性がんを対象としたTCR遺伝子治療の臨床研究を実施するため、共同研究契約を本年7月27日付で締結しました。2年以内の臨床試験の開始を目指します。

 

TCR遺伝子治療は、がん患者の血液から採取したリンパ球に、がん細胞を特異的に認識するTCR遺伝子を体外において導入し、培養によって増殖させてから患者に戻すという治療法です。TCR遺伝子が導入されたリンパ球が、患者の体内においてがん細胞のみを認識して攻撃し、消滅させることが期待されます。

 

当社は、三重大学医学部と共同で治療抵抗性の食道がんを対象としたTCR遺伝子治療の臨床研究を実施中で、2013年度に国内でTCR遺伝子治療の治験を開始する計画です。また、米国国立がん研究所のローゼンバーグ博士らのグループが実施した悪性黒色腫(メラノーマ)を対象としたTCR遺伝子治療の臨床試験の結果が2006年にScience誌に発表され、初めてその有効性が示されました。なお、本臨床試験では当社が開発したレトロネクチン法が採用されています。その後も同グループを含む複数の施設において臨床試験が進められ、他の種類のがんに対しても有効性が示されています。

 

当社は、がんやエイズを対象とした複数の遺伝子治療プロジェクトの臨床開発を日本、米国で進めておりますが、中国で遺伝子治療の臨床開発を進めるのはこれが初めてです。当社は、本遺伝子治療プロジェクトの立ち上げを含め、今後も中国における遺伝子治療・細胞医療事業の拡大を図ってまいります。

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>


【語句説明】

 

TCR(T細胞受容体)
T細胞に発現される糖タンパク質で、T細胞が抗原を認識する際の受容体です。腫瘍抗原を含む抗原は細胞内で分解されてペプチドとなり、HLA分子上に提示されます。TCRは、特定の型のHLAにより提示された特定の抗原を認識し、T細胞を活性化します。

 

T細胞
標的細胞の傷害と抗体産生の調節の役割を担う重要な細胞で、Tリンパ球とも呼ばれます。免疫系の司令塔的な役割を担っており、末梢リンパ組織の胸腺依存領域に主に分布します。

 

腫瘍抗原
正常細胞ががん化するに伴って新たに発現するようになる抗原分子を総称して腫瘍抗原とよびます。

 

レトロネクチン法
レトロネクチン法は、ヒトフィブロネクチンと呼ばれる分子を改良した組換えタンパク質であるレトロネクチン®を用いた高効率遺伝子導入法です。レトロネクチン法は、いまやレトロウイルスベクターによる遺伝子治療の臨床研究のスタンダードとなっています。また、当社はレトロネクチン®の新たな機能として、効率よくリンパ球を増殖させる効果を発見しています。