タカラバイオ株式会社は、米国でがん治療薬HF10の第Ⅱ相臨床試験を実施するため、本年4月30日(米国時間)に、米国食品医薬品局(FDA; Food and Drug Administration)に臨床試験実施申請資料(IND; Investigational New Drug)を提出しましたのでお知らせいたします。

 

本試験では、治癒切除不能または転移性悪性黒色腫を対象とし、HF10とIpilimumab(商品名:YERVOY®)を併用投与した際の有効性、安全性、免疫学的検査などの評価を行う予定です。また、本試験では、当社施設で製造したHF10製剤を投与する計画です。今後、試験実施施設の治験審査委員会(IRB; Institutional Review Board)等による審査を経て、被験者登録を開始いたします。

 

第Ⅰ相臨床試験では、HF10を投与した際の安全性、体内動態および腫瘍縮小効果等の評価を目的として実施し、良好な安全性が確認されました。また、一部の症例では、腫瘍の増大が抑制され、腫瘍免疫効果を示唆する血中成分の変動が観察されました。

 

本申請は、これまでの当社計画に基づく予定通りの申請であり、当社連結及び単体の平成27年度3月期業績への影響はありません。当社は、HF10の平成30年度の商業化を目標としており、引き続き臨床開発を推進してまいります。

 

【がん治療薬HF10第Ⅱ相臨床試験概要(予定)】
 

治験依頼者 タカラバイオ株式会社
対象患者 治癒切除不能または転移性悪性黒色腫
評価項目 有効性(腫瘍縮小効果、無増悪生存期間、1年生存率 等)、安全性、免疫学的検査
投与方法 HF10腫瘍内投与とIpilimumabの併用投与
症例数 43名
試験期間 2年間
実施施設 ハンツマン癌研究所(ユタ州)など約9施設
(治験責任医師: Robert Andtbacka, MD) 

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 事業管理部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

 

【語句説明】

 

悪性黒色腫

悪性度が非常に高い、皮膚に発生するがんの一種で、メラノーマとも呼ばれています。皮膚の色と関係するメラニン色素を産生する皮膚の細胞をメラノサイトと呼び、悪性黒色腫はこのメラノサイトあるいは母斑細胞(ほくろの細胞)が悪性化した腫瘍と考えられています。

 

がん治療薬HF10

当社は、平成22年11月にHF10事業を株式会社エムズサイエンスより取得しました。HF10は単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の弱毒化株で、がん局所に注入することによって顕著な抗腫瘍作用を示します。このようなウイルスは腫瘍溶解性ウイルス(oncolytic virus)と呼ばれています。

 

単純ヘルペスウイルス1型

単純ヘルペスウイルス1型は、唇にできる口唇ヘルペス(口内炎)や、眼の角膜にできるびらん(単純ヘルペス角膜炎)などの原因となります。感染しても、多くの場合は症状をあらわすことなく体内に潜んでいますが、ストレス・過労・病気などの要因で体力が低下すると症状をあらわします。アシクロビルをはじめとした抗ウイルス剤が有効です。

 

腫瘍溶解性ウイルス

腫瘍溶解性ウイルスとは、正常な細胞内ではほとんど増殖せず、がん細胞内において特異的に増殖するウイルス(制限増殖型ウイルス)です。増殖によって直接的にがん細胞を破壊し、さらにその際に放出されたウイルスが周囲のがん細胞に感染すること、また、破壊されたがん細胞の断片ががんに対する宿主の免疫を活性化することで、投与部位以外のがんも縮小することが期待されます。単純ヘルペスウイルス1型のほか、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、レオウイルス等から作られた腫瘍溶解性ウイルスの開発が行われています。

 

Ipilimumab

細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)を標的とする完全ヒト型モノクローナル抗体。平成23年5月に米食品医薬品局(FDA)に承認されて以来、世界40か国以上で進行悪性黒色腫の標準治療薬となっています。商品名 YERVOY®として販売されています。