タカラバイオ株式会社(社長:仲尾功一)の遺伝子治療共同開発パートナーであるモルメド社(MolMed S.p.A.、イタリア ミラノ市)は、米国において高リスク白血病を対象としたHSV-TK遺伝子治療(ハプロAdd-back)の第III相臨床試験を実施するための認可を米国食品医薬品局(FDA)より受けたことを、2011年1月6日付で発表しました。モルメド社は、当該臨床試験を既にイタリアにおいて実施中ですが、今回FDAの認可を受けたことにより、米国の医療機関においても対象となる患者を登録し、当該臨床試験を国際的に実施していくことになります。

 

当社とモルメド社は相互にライセンス契約を締結し、当社がアジアにおける白血病を対象とするHSV-TK遺伝子治療の独占的な商業化権を保有する一方、モルメド社は欧州と米国における当社の遺伝子導入技術・レトロネクチン法の非独占的実施権を保有しています。モルメド社が行っているHSV-TK遺伝子治療の第III相臨床試験においても、レトロネクチン法が使用されています。

 

モルメド社が欧州で高リスク白血病を対象に実施したHSV-TK遺伝子治療(ハプロAdd-back)の第 I/II 相臨床試験では、遺伝子導入細胞の追加輸注(Add-back)が造血幹細胞移植後の継続的な免疫系再構築に有効な手段であり、ハプロタイプ一致血縁ドナーからの造血幹細胞移植を行う上で有用であることが示されています。さらに、移植に伴う有害反応や原病の再発を防止することで、生存率において従来の治療法と比較して優れていることを示唆する成績が得られています。

 

当社は、日本において、同種造血幹細胞移植後の再発白血病を対象としたHSV-TK遺伝子治療(ドナーリンパ球輸注療法)の第I相臨床試験(治験)を国立がん研究センター中央病院において実施しています。

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

 

【語句説明】

 

HSV-TK遺伝子治療(ハプロAdd-back)
単純ヘルペスウイルス1型チミジンキナーゼ(HSV-TK)は、ヒトが持つチミジンキナーゼとは異なり、ガンシクロビルなどの抗ウイルス剤をリン酸化し、細胞毒性を有する最終産物を生成します。従ってガンシクロビルによりHSV-TK遺伝子を発現する細胞のみを死滅させることが可能です。このことから、HSV-TK遺伝子は自殺遺伝子と呼ばれています。本遺伝子治療では、ハプロタイプ一致ドナー由来の造血幹細胞を純化してから患者に移植したあと、HSV-TK遺伝子導入ドナーリンパ球をAdd-backします。重篤なGVHDが発症した場合には、ガンシクロビルを投与することによりドナーリンパ球を除去し、GVHDを沈静化します。これにより、免疫系の回復を図りつつ重篤なGVHDを回避することが可能となります。

移植片対宿主病(GVHD)
移植したドナー由来のリンパ球が患者の細胞や組織を異物とみなして患者自身を攻撃する免疫反応です。造血幹細胞移植後にしばしばみられる合併症であり、重篤なGVHDが発症すると生命にかかわることもあります。

レトロネクチン®
レトロネクチン®は、ヒトフィブロネクチンと呼ばれる分子を改良した組換えタンパク質です。レトロネクチン®を用いたレトロウイルスによる遺伝子導入法は、レトロネクチン法として知られており、いまやレトロウイルスによる遺伝子治療の臨床研究のスタンダードとなっています。そして、当社はレトロネクチン®の新たな機能として、効率よくリンパ球を増殖させる効果を発見しています。

HSV-TK遺伝子治療(ドナーリンパ球輸注療法)
同種造血幹細胞移植のドナーから採取したリンパ球に、HSV-TK遺伝子を体外で導入し、このリンパ球を同種造血幹細胞移植後に再発した患者へのドナーリンパ球輸注(DLI)療法に使用するという治療法です。重度の移植片対宿主病(GVHD)が生じた場合は、ガンシクロビルを投与してHSV-TK遺伝子の働きによりドナー由来のリンパ球のみを死滅させ、GVHDを沈静化させることができます。