タカラバイオ株式会社と三重大学医学部附属病院は、共同で新たなTCR遺伝子治療(前処置+MAGE-A4抗原特異的TCR遺伝子導入リンパ球輸注)の臨床研究を実施するため、三重大学が厚生労働省に遺伝子治療臨床研究実施計画を申請していましたが、2013年2月26日付で厚生労働大臣の了承が得られました。本臨床研究は、三重大学医学部附属病院で本年4月以降に開始される予定です。

 

当社がTCR遺伝子治療の商業化に向けて、2013年度後半に開始を目指している治験(開発コード:TBI-1201)では、遺伝子導入リンパ球投与前に抗がん剤による前処置を行う計画としており、本臨床研究を実施することで、治験開始までに前処置に関する有用な知見を蓄積し、今後の臨床開発に活かしていきたいと考えております。


 

【臨床試験の概要】

 

試験名 免疫抑制性前処置後のMAGE-A4抗原特異的TCR遺伝子導入Tリンパ球輸注による治療抵抗性食道癌に対する遺伝子治療臨床研究
対象患者 標準的な治療法(化学療法、放射線療法等)による効果が期待できない治療抵抗性の食道癌患者
治療法 抗がん剤投与による免疫抑制性前処置後にMAGE-A4特異的TCR遺伝子導入リンパ球を輸注する
主要評価項目 本遺伝子治療の安全性
副次評価項目 TCR遺伝子導入リンパ球の血中動態及び腫瘍組織への浸潤、腫瘍特異的免疫反応、腫瘍縮小効果
目標症例数 12例
試験期間 2年間

 

 

【前処理を行う理由と、実施中の臨床研究wtMA24と新たな臨床研究との関係】


TCR遺伝子治療は、腫瘍抗原に特異的なTCR遺伝子を利用して、米国の医療機関を中心に臨床試験において100例近くに及ぶ投与実績があり、有望な結果が得られています。これらの米国での実績では、患者にTCR遺伝子導入リンパ球を輸注する前に、抗がん剤や放射線療法の前処置を実施することにより、より治療効果を上げることができるという知見が蓄積されつつあります。

 

当社の技術協力のもと、三重大学医学部附属病院は、2009年より食道がんを対象としたMAGE-A4抗原特異的TCR遺伝子治療の臨床研究(wtMA24臨床研究)を実施しており、目標症例9例中、現在8例まで完了しています。このwtMA24臨床研究では、前処置を実施していませんが、今般、厚生労働省に了承が得られた新たなTCR遺伝子治療の臨床研究においては、抗がん剤による前処置を実施した後に、wtMA24臨床研究と同じレトロウイルスベクターによってMAGE-A4抗原特異的TCR遺伝子を導入した自己リンパ球の輸注を行う計画です。


 

【臨床研究に関するお問い合わせ先】


三重大学大学院 医学系研究科 遺伝子・免疫細胞治療学講座
Tel:059-231-5684 

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

 

【語句説明】

 

TCR

TCR(T細胞受容体)は、細胞に発現される糖タンパク質で、T細胞が抗原を認識する際の受容体です。腫瘍抗原を含む抗原は細胞内で分解されてペプチドとなり、HLA分子上に提示されます。TCRは、特定の型のHLAにより提示された特定の抗原を認識し、T細胞を活性化します。

 

TCR遺伝子治療

TCR遺伝子治療は、がん患者の血液から採取したリンパ球に、がん細胞を特異的に認識するTCR遺伝子を体外において導入し、培養によって増殖させてから患者に戻すという治療法です。TCR遺伝子が導入されたリンパ球が、患者の体内においてがん細胞のみを認識して攻撃し、消滅させることが期待されます。

 

前処置

TCR遺伝子治療における前処置は、抗がん剤や放射線療法によって患者体内のリンパ球を一時的に減少させる処置です。患者の体内のリンパ球を減少させることにより、輸注した遺伝子導入リンパ球の働きを抑制する免疫抑制機構を解除します。さらに、リンパ球を減少させた環境でリンパ球輸注すると、リンパ球が顕著に活性化され増殖することが知られており、治療効果が期待されます。

 

MAGE-A4抗原

正常細胞が、がん化に伴って新たに細胞表面上に提示するようになる抗原分子を総称して腫瘍抗原と呼びます。MAGE-A4抗原は、腫瘍抗原の一つで、食道がんや頭頸部がん、卵巣癌、悪性黒色腫等での発現が確認されています。