タカラバイオ株式会社は、米国ペンシルベニア大学及びドレクセル大学と共同でHIV-1感染症に対するMazF遺伝子治療の第I相臨床試験を開始すべく準備を進めてまいりましたが、12月5日付でドレクセル大学の倫理審査委員会において承認を受けました。その後、ドレクセル大学にて12月21日にSite Initiation Visit(SIV; 治験開始のための会議)を開催し、MazF遺伝子治療の第I相臨床試験が開始されました。第1例目の被験者の登録は来年1月中を予定しております。

 

MazF遺伝子治療は、大腸菌由来のRNA分解酵素であるMazFを利用したHIV感染症に対する遺伝子治療法です。本遺伝子治療法を用いた臨床試験の治験依頼者はペンシルベニア大学医学部のカール・ジューン(Carl June)教授です。また、本試験の治験責任医師はドレクセル大学医学部のジェフリー・ヤコブソン(Jeffrey Jacobson)医師です。本臨床試験に使用されるMazFレトロウイルスベクターは、当社草津事業所内の細胞・遺伝子治療センターでGMP製造(医薬品の製造管理、品質管理基準に準拠した製造)されました。被験者に投与される遺伝子導入細胞は、ペンシルベニア大学の細胞・ワクチン製造施設において、当社が供給するMazFレトロウイルスベクターを用いて調製されます。

 

第I相臨床試験では、被験者は6か月間にわたりMazF遺伝子が導入された自己のCD4陽性細胞の安全性、忍容性、免疫原性について評価されます。臨床試験の概要は以下となります。


 

【臨床試験概要】
 

治験依頼者 タカラバイオ株式会社/ペンシルベニア大学
対象患者 HIV-1陽性の成人男女
評価項目 MazF導入自己CD4陽性T細胞の安全性、忍容性及び免疫原性
被験者数

 

12名(各コホート6名)
<コホート1> 抗ウイルス療法を受けている非ウイルス血症性HIV感染者
<コホート2> 3ヶ月以上抗ウイルス療法を受けていないウイルス血症性HIV感染者
試験期間 3年間(予定)
実施施設 ドレクセル大学医学部 感染症/HIV治療部門
クリニカルリサーチセンター(ペンシルベニア州)

 

※ 本試験は、当社とペンシルベニア大学が共同の治験依頼者として実施し、被験者の登録等が行われる臨床試験の実施施設はドレクセル大学医学部付属病院です。

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

 

【語句説明】

 

HIV

後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因ウイルスです。HIVは変異しやすいウイルスのため、ワクチンや抗HIV薬の開発を阻んでいます。HIVがT細胞などに直接感染することにより、あるいは感染細胞が非感染細胞に融合することにより、体内に広がります。HIVは血清学的・遺伝学的性状の異なるHIV-1とHIV-2に大別されます。HIV-1は、世界流行の主体となっており、全世界に分布していますが、HIV-2は主に西アフリカ地域に限局しています。これは、HIV-2がHIV-1と比較して感染性や病原性が低いためと考えられています。

 

MazF遺伝子治療

当社は、大腸菌由来のRNA分解酵素であるMazFを用いたHIV遺伝子治療(MazF遺伝子治療)の開発を進めています。当社はこれまでにエイズの原因ウイルス(HIV-1)を用いた培養細胞への感染実験により、MazF遺伝子をヒトT細胞に導入することによって、細胞に対しては毒性を示すことなく、HIV-1の複製のみが効果的に抑制されることを発見しています。また、MazF遺伝子をレトロウイルスベクターにより導入したヒトT細胞に、様々な抗HIV薬が効かなくなった多剤耐性HIV-1株を感染させたところ増殖を抑制できること(鹿児島大学との共同研究)などの有望な結果を示してきました。また、医薬基盤研究所霊長類医科学研究センターと共同で、サルを用いたMazF遺伝子治療の動物試験も実施し、MazF遺伝子を導入した細胞がサル個体に対しても安全であることを確認しています。

 

Site Initiation Visit(SIV)

SIVは、新薬開発企業が、臨床試験実施施設の倫理委員会(IRB)等の承認を得た後、当該企業が医師らに向けて臨床試験の説明等を行う等、関係者が参加する会議のことです。SIV実施後、臨床試験が開始されます。

 

CD4陽性細胞

細胞表面マーカーであるCD4が陽性であるT細胞のことです。活性化されたCD4陽性細胞は、他のT細胞の機能を誘導したり、B細胞に抗体産生を誘導したりし、免疫応答を増強します。HIVはCD4陽性T細胞に感染します。