タカラバイオ株式会社では、がんを対象としたナチュラルキラー(NK)細胞療法に関する技術開発を進めておりますが、高純度NK細胞拡大培養法に関する京都府立医科大学がん免疫細胞制御学講座 古倉 聡 准教授らとの共同研究の成果を第25回日本バイオセラピィ学会学術集会総会(岡山県倉敷市、12月13~14日)にて本日発表しました。

 

がん免疫細胞療法で用いられるT細胞やNK細胞は、体外で拡大培養(活性化・増殖)後に患者に移入する前に、培養用培地を除去し洗浄した後、移入用の溶液に懸濁して投与されます。この際、通常はヒト血清アルブミンを含む生理食塩水がよく利用されています。ところが、このような溶液では、患者に移入される前に、NK細胞が持つがん細胞に対する強い細胞傷害活性や、抗体医薬との併用により期待されるADCC活性(抗体依存的細胞傷害活性)に関与する細胞表面上の分子の発現が、比較的早い段階(数時間)で減少していくことが確認されています。NK細胞が投与用の溶液に懸濁されてから移入されるまでには、数時間程度かかることもあることから、当社は、実際の治療に向けてNK細胞の機能を高いまま維持できる細胞保存溶液を新たに開発しました。この新細胞保存溶液を用いることで1日程度、NK細胞機能をより高く維持できることを確認しました。

 

また、当社は、NK細胞療法と、強い抗腫瘍効果が期待できる抗体医薬との併用についても基礎研究を進めています。抗体医薬はがん細胞の表面に特徴的に発現している分子に結合し、その結合した抗体を体内のNK細胞が認識し細胞傷害作用を発揮することが、作用機構の一つとして知られています。つまり、抗体医薬に加えて、体外で高純度に拡大培養したNK細胞を移入することで、より強い抗がん作用が期待されます。実際に、ヒト胃がん細胞株を接種したマウスに対して、抗体医薬と、高純度NK細胞拡大培養法により調製したNK細胞を併用して投与したところ、抗体医薬単独での投与と比較して、NK細胞が抗体医薬の抗腫瘍効果を増強する作用があることを確認しました。また、マウス体内に移入したNK細胞は、細胞傷害活性やADCC活性の機能発現に関係する細胞表面分子の発現が高く保持されていることも確認されました。

 

現在、当社が技術協力のもと、京都府立医科大学で実施中の高純度NK細胞移入療法の臨床研究を推進しつつ、抗体医薬とNK細胞療法の併用等のより効果的な治療法の開発を進めてまいります。 

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

 

【語句説明】

 

ナチュラルキラー(NK)細胞

NK細胞は、末梢血中に10~20%の割合で存在するリンパ球の一種で、ウイルスによる感染やがん細胞に対する初期防御機構としての働きを担っています。加齢やストレスなどによりNK細胞の活性が低下することが知られており、高齢化に伴うがん発症の原因の1つと考えられています。

 

ヒト血清アルブミン

血液中のタンパク質の一種で、血清という成分中に存在するタンパク質のうちの50~60%を占めており、100種類以上あるといわれる血清タンパク質の中で最も量が多いタンパク質です。血清アルブミンは、細胞の膜安定性や浸透圧維持に効果があり熱傷・出血時の治療などにも利用されています。そのため、免疫療法分野では投与細胞を安定に保つための成分として使用されています。

 

ADCC活性(抗体依存的細胞傷害活性)

抗体依存性細胞傷害活性とは、がん細胞などに抗体が結合し、さらにその抗体にマクロファージやNK細胞といった細胞が結合することにより発揮される細胞殺傷機構です。マクロファージやNK細胞はCD16(Fcレセプター:FcγRIII)を発現しており、抗体のFc部分と結合することで、がん細胞に対して殺傷力のある物質を放出して目的のがん細胞を殺します。