タカラバイオ株式会社と京都府立医科大学がん免疫細胞制御学講座とは、共同でナチュラルキラー(NK)細胞療法の臨床研究を4月16日より開始します。

 

当社が開発した新規NK細胞拡大培養法(*)では、レトロネクチン®拡大培養法で培養したT細胞がNK細胞増殖のために利用されており、NK細胞を約90%という高純度で大量に調製することができます。当社は、この新規拡大培養法を用いて調製されたNK細胞が、様々ながん細胞株に対して細胞傷害活性を示すこと、さらにはマウスを用いた動物実験によって腫瘍の縮小及び転移抑制作用を示すことを確認しています。

 

現在、当社の技術支援のもと、百万遍クリニック(京都市)、たけだ診療所(京都市)、藍野病院(茨木市)の3か所で、ナイーブT細胞を用いたレトロネクチン®誘導Tリンパ球療法(RetroNectin® induced T cell Therapy; RIT)の有償治療が行われています。RITは獲得免疫を利用した治療法ですが、もう1つの重要な免疫機構である自然免疫を担うNK細胞を用いたがん免疫細胞療法を確立すべく、今般の臨床研究が開始されます。今後、患者の状態に応じた治療法の提供や、ナイーブT細胞とNK細胞による併用療法、NK細胞と抗体医薬の併用療法等のより効果的な治療法の開発を行っていきたいと考えています。

 

* : 第23回日本バイオセラピィ学会学術集会総会で発表(平成22年12月9日ニュースリリース済)



 

【臨床研究概要】

 

目的 培養NK細胞を反復投与し、その安全性について、有害事象の種類、程度、頻度を評価することを主目的とする。
エンドポイント ・主要エンドポイント:培養NK細胞の反復輸注の安全性
・副次的エンドポイント:腫瘍縮小効果
対象 標準治療不応性の消化器癌症例
治療 採取された血液からNK細胞を多く含む細胞を調製し、経静脈的に投与する。
投与間隔は1週間で、3回投与を行う。
予定症例数 9例
実施期間 平成24年4月16日 ~ 平成26年3月 31日
実施責任者 京都府立医科大学がん免疫細胞制御学講座 准教授 古倉 聡
臨床研究に関する
問合わせ先
京都府立医科大学消化器内科学講座/がん免疫細胞制御学講座
Tel: 075-251-5519 

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

 

【語句説明】

 

ナチュラルキラー細胞(NK細胞)

NK細胞は、末梢血中に10~20%の割合で存在するリンパ球の一種で、ウイルスによる感染やがん細胞に対する初期防御機構としての働きを担っています。加齢やストレスなどによりNK細胞の活性が低下することが知られており、高齢化に伴うがん発症の原因の1つと考えられています。

 

レトロネクチン®誘導Tリンパ球療法(RetroNectin® induced T cell therapy; RIT)

当社が開発したレトロネクチン®拡大培養法により得られたナイーブT細胞を多く含む細胞を投与する治療法です。レトロネクチン®拡大培養法は、ヒトリンパ球の拡大培養の際に、インターロイキン2および抗CD3モノクローナル抗体に加え、ヒトフィブロネクチンを改良した組換えタンパク質である、レトロネクチン®を併用するものです。当社は、レトロネクチン®拡大培養法によって効率よくリンパ球を増殖させることができ、さらに得られた細胞集団に、生体内での生存能力が高く、抗原認識能も高いナイーブT細胞が多く含まれていることを確認しています。

 

T細胞

標的細胞の傷害と抗体産生の調節の役割を担う重要な細胞で、Tリンパ球とも呼ばれます。免疫系の司令塔的な役割を担っており、末梢リンパ組織の胸腺依存領域に主に分布します。

 

自然免疫と獲得免疫

生体の免疫機構は、大きく自然免疫と獲得免疫の2つに分けられます。自然免疫を担う重要な細胞の1つにNK細胞があり、ウイルス感染や細胞のがん化などによって体内に異常な細胞が発生した際に、すぐさまそれらを攻撃する初期防御機構としての働きを持っています。
一方、獲得免疫は、T細胞やB細胞と呼ばれる免疫細胞によって担われており、生体が抗原(生体にとっての異物)に感染した後に、それらの抗原を特異的に認識する免疫細胞が体内に現われることで機能する免疫機構です。

 

B細胞

特定の抗原の刺激に応じて抗体産生を行う細胞で、Bリンパ球とも呼ばれます。B細胞の一部は、抗原の情報を記憶した細胞として体内に残るため、次に同じ抗原に感染した時にはすぐに抗体が産生されます。

 

がん免疫細胞療法

がん免疫細胞療法は、患者自身のリンパ球を、自身のがん細胞を攻撃できるように体外で活性化し、その細胞数を増やしてから、患者の体内に再び戻し、がん細胞を破壊に導くというものです。外科手術、放射線治療、化学療法などと比較して、一般的に副作用が少ないと言われています。

 

NK細胞療法と抗体医薬の併用療法

現在がんに対するさまざまな抗体医薬が上市され、治療に用いられています。抗体医薬の作用メカニズムの1つとして、抗体が生体内でがん細胞を特異的に認識して結合し、そこに呼び寄せられたNK細胞やマクロファージが、がん細胞を攻撃して殺傷するというものがあります。このように抗体を介して細胞を殺傷する活性のことを、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC活性)と呼びます。
当社は、新規NK細胞作製技術で得られたNK細胞が抗体との併用によって高いADCC活性を発揮することを確認しました。この結果から、新規NK細胞作製技術と抗体医薬を組み合わせることで、治療効果をより高めることができることが示唆されています。

 

マクロファージ

体内の異物を貪食し排除する働きを有する細胞です。取り込んだ異物の一部を、抗原として他の免疫細胞に提示する機能も持っています。