タカラバイオ株式会社と米国インビボ・スクライブ社(InVivoScribe Technologies Inc., カルフォルニア州サンディエゴ)とは、当社が保有する、悪性度の高い急性骨髄性白血病の主要原因であるフルトスリー(FLT3)遺伝子の変異検出法に関する特許(FLT3/ITD特許)の日本国内における実施権を、インビボ・スクライブ社に許諾するライセンス契約を締結しました。

 

FLT3遺伝子の重複変異(ITD変異と呼ばれる)は、急性骨髄性白血病の難治性を示す遺伝子異常マーカーで、急性骨髄性白血病患者の約1/3で検出されます。このFLT3/ITD変異が確認された症例では、治療後の経過がよくないことが報告されています。
現在、このFLT3/ITD変異を標的とした分子標的薬の開発が世界中で行われていますが、これらの分子標的薬を投薬する前に、FLT3/ITD変異の有無を検査すれば、治療効果が見込まれる患者のみに分子標的薬を投与することができます。このように薬剤の効果が見込まれる患者を検査するための診断薬はコンパニオン診断薬と呼ばれています。

 

当社は、インビボ・スクライブ社に対し、2006年7月にFLT3/ITD特許に関する日本を除く全世界における独占的実施権を供与しています。今回の契約によって、インビボ・スクライブ社は同特許の日本国内における、1)体外診断薬に関する独占的実施権、2)受託サービスに関する非独占的実施権を獲得し、さらに研究用試薬に関しては当社とインビボ・スクライブ社の2社によって独占的に製造、販売が行われることになります。
インビボ・スクライブ社は、すでに欧米を中心にFLT3/ITD変異の検出に関する研究用試薬および受託検査サービスを提供していますが、今後はこれらのビジネスを日本国内においても展開します。また、体外診断薬については全世界における独占的実施権をインビボ・スクライブ社が保有することになり、当社が保有するFLT3/ITD特許に基づいたコンパニオン診断薬の開発が推進されることが期待されます。

 

今回のライセンス契約締結が、当社連結及び単体の平成25年3月期業績に与える影響は軽微ですが、当社は今後も自社による研究開発、製品化のみならず、保有する遺伝子関連技術・特許の収益化のためのアライアンス活動にも取り組んでいきます。 

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

 

【インビボ・スクライブ社の概要】

 

社名 InVivoScribe Technologies, Inc.
代表者 Jeffrey E. Miller, Ph.D (President & CEO)
所在地 6330 Nancy Ridge Drive, Suite 106, San Diego, CA, U.S.A
設立 1995年
事業概要 PCR法を用いた検査試薬の開発・製造・販売や検査技術のライセンスアウト事業

 

 

【語句説明】

 

FLT3遺伝子変異(ITD変異)

FLT3(FMS-like tyrosine kinase 3)は初期造血制御において重要な役割を担う受容体型チロシンキナーゼです。急性骨髄性白血病(AML)の約1/3の症例においてFLT3遺伝子の膜近傍(JM)領域周辺にInternal Tandem Duplication(遺伝子塩基配列の一部が重複する変異:ITD)を起こしており、この変異を有する症例は予後不良です。FLT3遺伝子の変異によってFLT3分子のもつキナーゼ活性が活性化され、様々なシグナル伝達系を介して細胞の無制御な増殖がおこり、また、アポトーシス(細胞死)や細胞分化に抵抗性を示すようになります。

 

急性骨髄性白血病

急性白血病は造血組織の腫瘍性疾患であり、細胞の分化の異常を伴い末梢血中に病的な幼若細胞(白血病細胞)の出現をみます。骨髄では白血病細胞の増殖のために正常血球の造血が抑制され、出血、発熱、貧血による症状で発症することが多いです。白血病は癌化した白血球が芽球の段階で増える急性と、成熟する過程の前段階で増える慢性に分類され、さらに癌化した細胞の種類によって、骨髄性とリンパ性に分類されます。主な白血病には急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病があります。
急性骨髄性白血病の治療の主体は多剤併用化学療法であり、寛解導入療法、地固め療法、寛解維持療法、強化療法に分けられます。また造血幹細胞移植による治療も進められています。