タカラバイオ株式会社は、米国においてがん治療薬HF10の第Ⅰ相臨床試験(単回投与)を実施しておりましたが、今般、試験を拡大し、治験実施施設の一つであるメアリクローリー治験センターで反復投与の被験者登録を開始しました。第1例目には11月初旬にも投与が開始される予定です。投与されれば、米国での治験において初めてのHF10の複数回投与症例となります。

 

がん治療薬HF10は、名古屋大学で発明された単純ヘルペスウイルス1型の弱毒型自然変異株であり、正常細胞ではほとんど増殖しませんが、がん細胞に感染すると増殖し、がん細胞を死滅させることが動物実験などにおいて示されています。このような抗がん作用を示すウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスと呼ばれています。当社は米国においてがん治療薬HF10の実用化を目指した臨床開発を進めています。

 

当初の第Ⅰ相臨床試験では、単回投与のみを計画しておりました。一方、後期臨床開発を進める上では、反復投与した際の安全性、体内動態及び腫瘍縮小効果などの評価を行う必要があります。今般、早期に反復投与の試験を実施すべく、これまで実施してきた第Ⅰ相臨床試験の試験計画書を変更し、米国食品医薬品局(FDA; Food and Drug Administration)と治験実施施設の審査を経て、スムーズに反復投与の被験者登録の受付を開始することができました。
今回の反復投与試験では、標準治療での治癒が期待できない、皮膚・表在性病変を有する固形がん患者を対象に、HF10を複数回投与した際の安全性、体内動態および腫瘍縮小効果などの評価を行います。

 

なお、今般のHF10の第Ⅰ相臨床試験拡大による平成25年3月期当社単体及び連結業績への影響は通期業績予想(本年5月9日発表)に織り込まれており、今回の第Ⅰ相臨床試験拡大による通期業績予想の変更はありません。当社は、2018年度の商業化を目指し、HF10の臨床開発を効率的かつ迅速に推進していきます。

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

 

【語句説明】

 

単純ヘルペスウイルス1型

単純ヘルペスウイルス1型は、唇にできる口唇ヘルペス(口内炎)や、眼の角膜にできるびらん(単純ヘルペス角膜炎)などの原因となります。感染しても、多くの場合は症状をあらわすことなく体内に潜んでいますが、ストレス・過労・病気などの要因で体力が低下すると症状をあらわします。アシクロビルをはじめとした抗ウイルス剤が有効です。

 

腫瘍溶解性ウイルス

腫瘍溶解性ウイルスとは、正常な細胞内ではほとんど増殖せず、がん細胞内において特異的に増殖するウイルス(制限増殖型ウイルス)です。増殖によって直接的にがん細胞を破壊し、さらにその際に放出されたウイルスが周囲のがん細胞に感染すること、また、破壊されたがん細胞の断片ががんに対する宿主の免疫を活性化することで、投与部位以外のがんも縮小することが期待されます。単純ヘルペスウイルス1型のほか、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、レオウイルス等から作られた腫瘍溶解性ウイルスの開発が行われています。