タカラバイオ株式会社は、ES細胞/iPS細胞などの多能性幹細胞が未分化状態であるか、あるいは分化状態が起きているか、を簡便に調べるための試薬であるプライマーセットを本年10月1日より発売します。

 

当社のドラゴンジェノミクスセンター(三重県四日市市)では、NEDO事業の「ヒト幹細胞産業応用促進基盤技術開発/ヒト幹細胞実用化に向けた評価基盤技術の開発」に平成23年度より参加しており、京都大学 物質-細胞統合システム拠点 再生医科学研究所等とともに、ヒトES細胞の品質評価指標の開発に取り組んでいます。その中で、ISCI(The International Stem Cell Initiative:国際幹細胞イニシャティブ)、ISSCR(International Society for Stem Cell Research :国際幹細胞学会)等における幹細胞の国際標準化の議論および既知情報を踏まえ、複数の異なるヒトES細胞株を対象に、幹細胞を特徴づける遺伝子発現についての分析指標の選択と解析を行っています。
今回、これらの成果をもとに、ES細胞の未分化/分化の状態で遺伝子発現に差がある(変動する)88種類の遺伝子を選定し、当社のリアルタイムRT-PCR試薬を用いて、幹細胞の遺伝子発現の特徴を検証するための試薬(プライマーセット)を製品化しました。

 

本製品には、1枚の96穴プレートに幹細胞の多分化能と自己増幅能に関連する88種類の遺伝子と8種類の標準(ハウスキーピング)遺伝子のプライマーが搭載されており、各種培養条件で調製されたES細胞サンプルの遺伝子発現をリアルタイムRT-PCRによる相対定量法によって比較することで、対象が未分化(多能性)幹細胞の状態を維持しているかの判別を簡便に調べることが可能です。また、本製品はiPS細胞への適用も可能であり、培養条件の評価はもとより、新たに確立されたiPS細胞の品質評価などにも利用できるものです。


 

【製品概要】

 

製品名 製品コード 希望小売価格(税込)
PrimerArray® Embryonic Stem Cells (Human) PH016 65,100円
PrimerArray® Embryonic Stem Cells (Mouse) PN016 65,100円

製品の詳細、価格やご注文については、当社営業部(TEL:077-543-7231)にお問い合わせください。

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

 

【語句説明】

 

ES細胞

ES(Embryonic Stem:胚性幹)細胞は、初期胚より樹立され、分化多能性を維持したまま半永久的に増殖させることができると言われています。これまで多くの再生医療関連の基礎研究がES細胞を用いて行われています。また、幹細胞の研究を進める上では、iPS細胞とES細胞との比較研究も重要と考えられています。

 

iPS細胞

体細胞に、数種類の遺伝子を導入することなどによって分化多能性が誘導された細胞のことです。2006年に京都大学山中伸弥教授らのグループにより、この現象が発見され人工多能性幹細胞(induced Pluripotent Stem Cells:iPS細胞)と名付けられました。iPS細胞は、ES(Embryonic Stem)細胞とほぼ同等の分化多能性を示すことから、薬剤開発、種々の疾患の病態解明や再生医療への応用が期待されています。

 

プライマー

遺伝子増幅法(PCR法)では、目的とするDNAの領域を増幅する際に、その領域の両端に結合することのできる20塩基前後の合成したDNAが必要で、これをプライマーと呼びます。プライマーは、目的DNAに相補的に結合できるように設計され合成します。プライマーが目的DNAと結合した後、酵素(DNAポリメラーゼ)がプライマーを目的DNAと同一の塩基をつなげていく(伸長する)ことにより、目的DNAが複製されます。

 

NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)

1970年代に世界を襲った二度のオイルショックを契機に、エネルギーの多様化が求められる中、新たなエネルギー技術の開発を使命に、エネルギー問題解決の先導役として、1980年に設立されました。それ以来、NEDOは国際競争力の向上を目指し、社会の様々な課題を解決するため、技術開発・事業実証・制度整備を、一体的に推進しています。

 

ISCI(The International Stem Cell Initiative:国際幹細胞イニシャティブ)

2005年より、世界中のヒトES細胞研究者が集まり、どのような解析を行って、ヒトES細胞を比較して標準化を行うべきかを議論・協議する機関で、イギリス・シェフィールド大学のピーター・アンドリュース教授をリーダーとし、日本からは京都大学・中辻憲夫教授らが参加しています。

 

ISSCR(International Society for Stem Cell Research :国際幹細胞学会)

幹細胞研究についての情報交換の促進を促す目的でHarvard大学のLen Zon教授らにより2002年に開設された国際学会(会長:京都大学・山中伸弥教授)です。幹細胞研究に携わる著名な研究者はほとんどがこの学会のメンバーになっており、日本からも多くの方が参加しています。2012年6月に横浜で開催された第10回の大会には世界中から参加者が集まりました。幹細胞および幹細胞治療についてよくある質問に対する回答を記載した「幹細胞治療について患者ハンドブック」(”Patient Handbook on Stem Cell Therapies”)の作成も行っています。

 

リアルタイムRT-PCR

従来のPCR法は、サーマルサイクラーという機器で目的DNAを増幅した後、増幅産物を電気泳動で解析するという手順で行われています。リアルタイムPCR法では、サーマルサイクラーと分光蛍光光度計を一体化した機器を用いて、PCRでのDNA増幅産物の生成過程をリアルタイム(実時間)で検出し、解析を行います。DNA増幅産物の生成の過程を連続して観察できるため、より正確な定量ができます。また電気泳動を行う必要がないため、解析時間の大幅な短縮が可能となります。
増幅する対象がDNAの場合は、リアルタイムPCR、RNAの場合は、リアルタイムRT-PCRといいます。