タカラバイオ株式会社は、食中毒の原因となるサルモネラ菌や循環式浴槽水の汚染で問題となったレジオネラ属菌等の、生きた病原性細菌のみを選択的に検出、定量するためのシステムを開発しました。本システムは、生菌のみを選択する試薬・装置と、病原性細菌の検出試薬(発売済み)からなり、菌種に対応した生菌のみを選択する試薬3種及び専用装置を8月30日より新発売いたします。

 

様々な食品製造の品質管理工程や環境分析などにおいて、病原性細菌の検査を実施する必要があります。従来より、病原性細菌を寒天培地等で数日間培養し、細菌を増殖して検出する手法(培養法)による検査が広く行われてきました。
近年、培養法より迅速(数時間)かつ高感度に検査が行える手法として、遺伝子増幅法(PCR法又はリアルタイムPCR法)を用いて病原性細菌を検出する手法が広まりつつあります。しかしながら、現行の遺伝子増幅法では、混在する死んだ菌(死菌)の遺伝子(DNA)もあわせて検出してしまい、生きた菌(生菌)のみを検出することができませんでした。

 

当社は、上記の死菌も検出してしまうという問題を解決するため、生菌の持つDNAが薬剤修飾されにくいことを利用して生菌由来の遺伝子を選択的に検出する技術(図参照)を実用化しました。当該技術は、NorDiag ASA社(ノルウェー)や森永乳業株式会社が知的財産権を保有しており、当社は日本においてこの知的財産権について実施権の許諾を受けています。
当社は、当該技術を利用してさらに自社開発を重ね、生菌のみを選択する工程における薬剤の反応性を高め(当社特許出願中)、製品化に至りました。生菌のDNAを1日以内で検出することが可能となり、これまでの培養法と比較して検査に要する時間を大幅に削減でき、かつ生菌のみを検出することが可能になりました。

 

新製品には、サルモネラ菌やレジオネラ属菌に至適化した試薬に加えて、グラム陰性菌を対象とした汎用性試薬があります。また、生菌と死菌のDNAを区別する際に必要な専用の光照射装置も同時に発売します。新製品の試薬・装置と既に当社が販売しているリアルタイムPCR試薬(サルモネラ菌検出用、レジオネラ属菌検出用)やユーザーが確立した検出用PCR/リアルタイムPCR試薬(グラム陰性検出用菌)及び装置を使用することで、各々の生菌由来のDNAのみを検出(生菌のみを検出)できます。
当社は、PCR・リアルタイムPCR法の応用分野(Applied Field)として、食品分析、環境分析、分子診断等向けの新製品開発に注力していますが、今後も、O-157を初めとした腸管出血性大腸菌などの製品ラインアップを拡充し、2年後には関連製品をあわせて年間2億円の売上を目指します。

図  生菌由来の遺伝子を選択的に検出する技術

 

サンプルにEMAという薬剤を含む試薬を添加した後、光を照射してDNAと反応させます。このとき、生菌では薬剤が内部に浸透しないためDNAへの化学修飾は起こりませんが、死菌由来DNAやその他、サンプル中に含まれるDNAはEMAによって化学修飾されます。修飾されたDNAは反応が阻害され遺伝子増幅できませんので、EMA処理後の遺伝子増幅法による検出では生菌由来遺伝子のみが検出されます。

 

【新製品概要】

 

サルモネラ菌用生菌DNA選択試薬

製品名 Viable Salmonella Selection Kit for PCR
製品コード 7711
容量 50回
価格 52,500円(税込)

 

レジオネラ属菌用生菌DNA選択試薬

製品名 Viable Legionella Selection Kit for PCR
製品コード 7710
容量 50回
価格 52,500円(税込)

グラム陰性菌用生菌DNA選択試薬

製品名 Viable Bacteria Selection Kit for PCR (Gram Negative )
製品コード 7700
容量 100回
価格 52,500円(税込)

 

光照射装置

製品名 LED Crosslinker
製品コード EM100
処理能力 1.5 mLチューブ16本
価格 147,000円(税込)

【既存製品概要】

 

サルモネラ菌検出用試薬

製品名 CycleavePCR®Salmonella Detection Kit Ver.2.0
製品コード CY205
容量 : 50回
価格 70,350円(税込)

 

レジオネラ属菌用生菌DNA選択試薬

製品名 CycleavePCR® Legionella (5S rRNA) Detection Kit Ver.2.0
製品コード CY210
容量 50回
価格 70,350円(税込)

 

本製品の詳細は、製品・受託サービス情報をご覧ください。ご購入については、当社営業部営業企画担当(TEL:077-543-7231)にお問い合わせください。

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

 

【NorDiag ASA社の概要】

 

会社名 NorDiag ASA
設立 2002年
代表者 Mårten Wigstøl, CEO
従業員数 : 37名
住所 Frysjaveien 40, N-0884 Oslo, Norway
事業概要 遺伝子分析用試料調製装置および試薬の製造・販売
ホームページ http://www.nordiag.com/

 

 

【森永乳業の概要】

                                        (2011年3月31日時点)

会社名 森永乳業株式会社
設立 1949年
代表者 古川 紘一
従業員数 3,092名
事業概要 市乳、乳製品、アイスクリーム、飲料、流動食などの製造・販売および飼料の販売、プラント設備の設計施工など
ホームページ http://www.morinagamilk.co.jp/

 

 

【語句説明】

 

サルモネラ菌
サルモネラ菌はグラム陰性の桿菌で、自然界に広く分布しています。最も重要な食中毒の原因菌のひとつであり、食肉や鶏卵などの畜産物が主な原因食品といわれています。近年サルモネラ菌で汚染した鶏卵による食中毒が全国的に発生しており問題となっています。

レジオネラ属菌
レジオネラ属菌は肺炎の原因菌となり、これによる感染症をレジオネラ症と呼びます。このうち8割以上がレジオネラニューモフィラによるものとされています。好気性のグラム陰性桿菌で、土壌や淡水に生息し、冷却塔水、循環式浴槽水、給湯水、温泉など環境水を広く汚染します。レジオネラ症は、レジオネラ属菌の感染により起こる疾患で、感染経路は汚染水のエアロゾルの吸入・汚染水の吸引経口感染など環境水を介することが知られています。

PCR法
Polymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)法の略称です。温度サイクル装置(サーマルサイクラー)を使用し、微量のDNAを数時間のうちに数百万倍にまで増幅する技術です。 

リアルタイムPCR
従来のPCR法は、サーマルサイクラーという機器で目的DNAを増幅した後、増幅産物を電気泳動で解析するという手順で行われています。リアルタイムPCR法では、サーマルサイクラーと分光蛍光光度計を一体化した機器を用いて、PCRでのDNA増幅産物の生成過程をリアルタイム(実時間)で検出し、解析を行います。DNA増幅産物の生成の過程を連続して観察できるため、より正確な定量ができます。また電気泳動を行う必要がないため、解析時間の大幅な短縮が可能となります。 これらの特徴を活かし、遺伝子発現のモニタリングや特定遺伝子の存在確認による微生物の検出、生物種の判定など幅広い分野での応用が進んでいます。

グラム陰性菌
グラム染色で染色されない細菌の一群で、腸管出血性大腸菌O-157やサルモネラ菌など病原性細菌を含む多くの細菌が属します。細胞壁は内膜と外膜の二層構造を有しています。

O-157
腸管出血性大腸菌(EHEC)の一つで、血便と激しい腹痛を伴う出血性大腸炎、さら
には溶血性尿毒症症候群を引き起こす病原性大腸菌です。これらの重篤な症状の原因は、EHECが産生する細胞毒素であるベロ毒素です。

EMA (ethidium monoazide)
光反応性核酸架橋剤であり、350nm~700nmの波長の光照射によりDNA又はRNAに共有結合して分子間を架橋する薬剤です。本試薬により修飾を受けたDNAはPCR反応阻害が起こります。