タカラバイオ株式会社では、2012年8月9日に遺伝子治療・再生医療用のGMP製造(医薬品の製造管理、品質管理基準に準拠した製造)・研究施設の新設計画の概要を発表いたしましたが、取得を完了した土地の状況及び製造・研究施設の新設スケジュール・施工業者等について、以下のとおりお知らせします。

 

当社は、遺伝子治療・再生医療用の製造・研究施設の新設に向け、土地(滋賀県草津市野路東七丁目字観音堂2275番60他)の確保をはじめとした準備を進めてきました。土地は2段階で取得することになっており、1段階目に取得した土地の所有権移転登記手続きが本年1月4日付で完了いたしました。なお、1段階目の土地面積は、全46,901.84㎡のうち、15,839.87㎡です。2段階目の31,061.97㎡は2014年3月末までに取得し、登記申請を行う予定です。

 

今般、所有権移転登記が完了した土地には、遺伝子治療・再生医療用のベクター及び細胞のGMP製造施設、並びに基礎研究用の動物実験施設を新設する計画です。施工業者は、GMP製造施設が株式会社ダイキンアプライドシステムズ、動物実験施設が株式会社日本クレアとなります。GMP製造施設は、2014年5月末までに設置を完了し、GMP製造のための設備機器のバリデーションを半年程度で実施した後、本格稼働を開始する予定です。動物実験施設は、2014年3月末に設置を完了し、4月より使用を開始する予定です。また、これらの2施設の建設費用と設備機器を合わせた総工費は約41億円になりますが、全額手元資金で賄います。

 

現在、当社が第Ⅰ相臨床試験を実施している臨床開発プロジェクトには、白血病を対象としたHSV-TK遺伝子治療(日本)、固形がんを対象としたがん治療薬HF10(米国)、HIV-1感染症を対象としたMazF遺伝子治療(米国)があります。また、2013年度には食道がんを対象としたTCR遺伝子治療(日本)の第Ⅰ相臨床試験の開始を予定しています。当社は現在、滋賀県草津市所在のGMP製造施設でこれらの臨床開発プロジェクトに使用するベクターを製造していますが、スケールアップした新GMP製造施設の稼働後に、新施設でのGMP製造に切り替えていく計画です。

 

さらに、国内のアカデミアを中心として、iPS細胞を用いた再生医療の臨床研究や、遺伝子治療の臨床研究が立ち上がりつつあります。当社は新GMP製造施設を自社開発プロジェクト以外のバイオ医薬品の開発支援にも積極的に活用していくため、アカデミアや企業が遺伝子治療・再生医療の臨床開発に使用するベクターや遺伝子導入細胞のGMP製造受託サービス事業(CDMO(Contract Development & Manufacturing Organization)事業)の拡販に注力し、売上を拡大していきたいと考えております。



 

【GMP製造施設の概要】

 

延床面積 約6,800㎡
建物概要 鉄筋3階建

 

 

【動物実験施設の概要】

 

延床面積 約1,600㎡
建物概要 鉄筋2階建

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

 

【語句説明】

 

GMP製造

GMP準拠で製造を行う事。GMPとは、Good Manufacturing Practiceの略で、医薬品を製造する際に遵守すべき「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理規則」を指します。GMPは、安全で品質が担保された医薬品を供給するため、医薬品の製造時の管理、遵守事項を各国の規制当局が定めたものです。

 

ベクター

目的遺伝子を細胞やバクテリアに導入するための分子。プラスミドベクター、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターなどがあります。

 

バリデーション

バリデーションとは、目的とする品質に適合する製品を恒常的に製造できるようにするために、製造所の構造設備並びに手順、工程その他の製造管理及び品質管理の方法が期待される結果を与えることを検証し、これを文書化することを言います。

 

HSV-TK遺伝子治療

当社は、イタリアのMolMed社よりライセンスを受け、国内で再発白血病を対象として、国立がん研究センターにおいて、HSV-TK遺伝子治療の第Ⅰ相臨床試験を実施しています。2013年度には日韓共同治験を開始する予定です。
現在、ドナーリンパ球輸注(DLI)療法が行われていますが、副作用として生じる移植片対宿主病(GVHD)が重大な問題となっています。このGVHDを沈静化する手段を備えたDLI療法により再発造血器悪性腫瘍の治療を試みるものであり、レトロウイルスベクターを用いてHSV-TK遺伝子が導入されたドナー由来リンパ球が被験者に投与されます。GVHDが発症した際には、ガンシクロビルという薬剤を投与し、導入されたHSV-TK遺伝子の働きによってドナー由来のリンパ球のみを消滅させ、GVHDの沈静化を図ります。

 

MazF遺伝子治療

HIVが感染した際に、RNA分解酵素MazFが発現する仕組みを持たせたレトロウイルスベクターを用いて、体外において患者由来のT細胞に遺伝子導入します。患者に戻されたMazF遺伝子導入T細胞は、HIVが感染してもMazFによってウイルスの増殖が阻止されるため、その機能が保持され、HIV感染症の治療につながることが期待されます。当社は、米国のペンシルベニア大学、ドレクセル大学と共同で、MazF遺伝子を用いたエイズ遺伝子治療の第Ⅰ相臨床試験を米国において開始しました。

 

がん治療薬HF10

当社は、2010年11月にHF10事業を株式会社エムズサイエンスより取得しました。当社は現在、頭頸部がん等の固形がんを対象としたがん治療薬HF10の第Ⅰ相臨床試験を米国において実施しています。HF10は単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の弱毒化株で、がん局所に注入することによって顕著な抗腫瘍作用を示します。このようなウイルスは腫瘍溶解性ウイルス(oncolytic virus)と呼ばれています。

 

TCR遺伝子治療

TCR遺伝子治療は、がん患者の血液から採取したリンパ球に、がん細胞を特異的に認識するTCR遺伝子を体外において導入し、培養によって増殖させてから患者に戻すという治療法です。TCR遺伝子が導入されたリンパ球が、患者の体内においてがん細胞のみを認識して攻撃し、消滅させることが期待されます。

 

TCR(T細胞受容体)

T細胞に発現される糖タンパク質で、T細胞が抗原を認識する際の受容体です。腫瘍抗原を含む抗原は細胞内で分解されてペプチドとなり、HLA分子上に提示されます。TCRは、特定の型のHLAにより提示された特定の抗原を認識し、T細胞を活性化します。

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970