タカラバイオ株式会社と名古屋大学とは共同で、がん治療薬HF10の臨床研究を本年4月に開始する予定です。本臨床研究は、本年3月21日付契約に基づき、当社の協力のもと、名古屋大学大学院医学系研究科消化器外科学講座及び消化器内科学講座/光学医療診療部が中心となって実施されます。

 

HF10は、単純ヘルペスウイルスであり、正常細胞ではほとんど増殖しませんが、がん細胞に感染すると増殖し、がん細胞を死滅させることが実験データにより示されています。HF10を用いた治療法は、腫瘍を縮小することを期待し、腫瘍部位に直接HF10を投与するというものです。当社は、現在、固形がんを対象とした第Ⅰ相臨床試験を米国において実施中です。

 

今回の臨床研究では、切除不能局所進行膵癌患者を対象に、HF10と既存の抗がん剤との併用時の安全性、体内動態および腫瘍縮小効果などの評価を行います。これまでに実施している臨床試験はいずれもHF10の単独投与であり、このような既存療法との臨床における併用投与は今回が初めての試みとなります。
HF10は、既存の化学療法等と全く異なるメカニズムである治療法であることから、併用療法も可能であり、Unmet Medical Needs(今だ有効な治療法がない医療ニーズ)の高い深刻ながんに対し新たな治療薬となることが期待されます。当社は、本試験より今後の臨床開発の参考となるデータが取得できるものと期待しています。

 

当社は、2018年度の商業化を目指し、現在米国においてHF10の第I相臨床試験を実施しており、本臨床研究を含めたHF10の臨床開発を引き続き推進していきます。



 

【臨床研究概要】

 

試験名 切除不能進行膵がん患者に対する単純ヘルペスウイルスⅠ型(HSV-1)自然変異株HF10を用いた腫瘍内投与Phase I試験
対象患者 画像診断にて手術適応がなく内科的治療が選択される切除不能進行膵がん患者のうち、超音波内視鏡(EUS)下での腫瘍内投与可能な病変を有する患者
治療法 腫瘍局部へのHF10投与及び抗がん剤投与の併用療法
主要評価項目 副次的評価項目 安全性
腫瘍縮小効果、免疫応答及び対内動態
目標症例数 9例
試験期間 2013年4月~2015年3月(予定)

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

 

【語句説明】

 

がん治療薬HF10

単純ヘルペスウイルス1型の弱毒型自然変異株であり、正常細胞ではほとんど増殖しませんが、がん細胞に感染すると増殖し、がん細胞を死滅させることが動物実験などにおいて示されています。このような抗がん作用を示すウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスと呼ばれています。名古屋大学大学院医学系研究科ウイルス学の西山幸廣名誉教授が、弱毒性かつ副作用が少ない単純ヘルペスウイルス変異株(HF10)を発見され、当社が商用化の権利を獲得しました。

 

単純ヘルペスウイルス1型

単純ヘルペスウイルス1型は、唇にできる口唇ヘルペス(口内炎)や、眼の角膜にできるびらん(単純ヘルペス角膜炎)などの原因となります。感染しても、多くの場合は症状をあらわすことなく体内に潜んでいますが、ストレス・過労・病気などの要因で体力が低下すると症状をあらわします。アシクロビルをはじめとした抗ウイルス剤が有効です。

 

腫瘍溶解性ウイルス

腫瘍溶解性ウイルスとは、正常な細胞内ではほとんど増殖せず、がん細胞内において特異的に増殖するウイルス(制限増殖型ウイルス)です。増殖によって直接的にがん細胞を破壊し、さらにその際に放出されたウイルスが周囲のがん細胞に感染すること、また、破壊されたがん細胞の断片ががんに対する宿主の免疫を活性化することで、投与部位以外のがんも縮小することが期待されます。単純ヘルペスウイルス1型のほか、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、レオウイルス等から作られた腫瘍溶解性ウイルスの開発が行われています。