当社は、本年5月31日(米国時間)に、第50回米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会において、米国で実施したがん治療薬HF10の第Ⅰ相臨床試験の結果を発表しましたのでお知らせいたします。

 

本試験の結果、がん治療薬HF10の安全性が確認されました。また、複数の症例で腫瘍の増大が抑制されることが確認されました。特に、悪性黒色腫の症例において、半数以上で、標的病変の30%以上の縮小あるいは腫瘍増大の抑制が確認されました。

 

当社は、悪性黒色腫を対象とした第Ⅱ相臨床試験の臨床試験実施申請資料を本年4月30日(米国時間)に米国食品医薬品局に提出し、米国でがん治療薬HF10の第Ⅱ相臨床試験を開始する準備を進めております。また、日本における臨床試験を平成26年度に開始する予定です。平成30年度の商業化を目標として、引き続き臨床開発を推進してまいります。


【第Ⅰ相臨床試験結果概要】

 

目的 がん治療薬HF10の安全性、薬物動態、有効性の検討
対象 頭頸部扁平上皮局所進行がん又は皮膚・表在性病変を有する固形がん患者
症例数 登録28例、うち投与26例
投与方法 Stage 1:腫瘍内へ単回投与
Stage 2:腫瘍内へ反復投与(2~4週間隔で2~4回投与)
投与量 Stage 1:1×105、3×105、1×106、1×107 TCID50
Stage 2:1×106、1×107 TCID50
評価項目 安全性
有効性(腫瘍縮小効果、病理組織学的評価)
体内動態(血液、唾液、尿のウイルス量)
抗HSV-1抗体
試験結果 重篤な有害事象は見られなかった。
因果関係を否定できない有害事象は8例(33%)あったが、いずれも副作用のグレードが2以下であった。
HF10投与前の抗HSV-1抗体の有無は副作用に影響しなかった。
血液、唾液または尿中へのウイルス排泄が認められたが、抗ウイルス剤の投与を要することはなかった。
投与症例(26例)の標的病変の効果は、1例(4%)が部分奏功、7例(27%)が安定であった。
特に、悪性黒色腫では、投与症例(9例)のうち、1例(11%)が部分奏功、4例(44%)が安定であった。

 

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この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

 

【語句説明】

 

がん治療薬HF10

当社は、平成22年11月にHF10事業を株式会社エムズサイエンスより取得しました。HF10は単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の弱毒化株で、がん局所に注入することによって顕著な抗腫瘍作用を示します。このようなウイルスは腫瘍溶解性ウイルス(oncolytic virus)と呼ばれています。

 

単純ヘルペスウイルス1型

単純ヘルペスウイルス1型は、唇にできる口唇ヘルペス(口内炎)や、眼の角膜にできるびらん(単純ヘルペス角膜炎)などの原因となります。感染しても、多くの場合は症状をあらわすことなく体内に潜んでいますが、ストレス・過労・病気などの要因で体力が低下すると症状をあらわします。アシクロビルをはじめとした抗ウイルス剤が有効です。

 

腫瘍溶解性ウイルス

腫瘍溶解性ウイルスとは、正常な細胞内ではほとんど増殖せず、がん細胞内において特異的に増殖するウイルス(制限増殖型ウイルス)です。増殖によって直接的にがん細胞を破壊し、さらにその際に放出されたウイルスが周囲のがん細胞に感染すること、また、破壊されたがん細胞の断片ががんに対する宿主の免疫を活性化することで、投与部位以外のがんも縮小することが期待されます。単純ヘルペスウイルス1型のほか、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、レオウイルス等から作られた腫瘍溶解性ウイルスの開発が行われています。

 

悪性黒色腫

悪性度が非常に高い、皮膚に発生するがんの一種で、メラノーマとも呼ばれています。皮膚の色と関係するメラニン色素を産生する皮膚の細胞をメラノサイトと呼び、悪性黒色腫はこのメラノサイトあるいは母斑細胞(ほくろの細胞)が悪性化した腫瘍と考えられています。

 

標的病変

治療の効果をみるために測定することが可能な病変のことをいいます。

 

TCID50

培養した細胞の50%を感染させることができるウイルス量を表す単位です。50% Tissue Culture Infections Doseを略してTCID50と呼びます。

 

抗HSV-1抗体

単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)に結合する抗体のことを抗HSV-1抗体と言います。一般的に、血液中に抗HSV-1抗体をもつ人は、HSV-1の感染に対して免疫があるため、HSV-1の感染に伴う症状も穏やかと考えられます。

 

副作用のグレード

副作用の重症度を示すものです。米国がん国立研究所が公表した基準では、グレード1~5の5段階に分類されています。グレード1~5の順に、軽度、中等度、高度、生命を脅かす重症度、死亡となります。グレード2以下は、症状に対して治療が必要になる可能性があるが、臨床試験は継続できる程度とされています。

 

部分奏功、安定

抗がん剤の治療により、がんの大きさがどの程度小さくなったかを表す基準で、最も一般的なRECIS(Response Evaluation Criteria in Solid Tumor)のガイドラインで以下のように定義されています。

完全奏功 がんが消失し、それが4週間続いた状態。
部分奏功 がんの大きさが30%以上縮小し、それが4週間続いた状態。
進行 がんの大きさが20%以上増加した状態。
安定 部分奏功と進行の間の状態。