タカラバイオ株式会社と鹿児島大学大学院医歯学総合研究科・難治ウイルス病態制御研究センターとは、RNA分解酵素MazFを用いたエイズ遺伝子治療法に関する有効性、安全性評価のための培養細胞を用いた非臨床試験を共同で実施してきました。その成果が、学術誌Human Gene Therapy Methods オンライン版(http://online.liebertpub.com/doi/abs/10.1089/hgtb.2012.131)に掲載されましたのでお知らせします。論文のタイトルや研究成果は以下です。

 

1. タイトル
「Sustained inhibition of HIV-1 replication by conditional expression of the E. coli-derived endoribonuclease MazF in CD4+ T cells」
(RNA分解酵素MazF遺伝子を導入したCD4陽性T細胞における持続的なエイズウイルス(HIV-1)複製の抑制)

 

2. MazFの有効性について
MazF遺伝子導入細胞は、多剤耐性臨床分離株を含む様々なタイプのHIV-1の複製を抑制します。今回の試験ではMazF遺伝子を導入したヒトCD4陽性T細胞をHIV-1存在下で200日間の培養を実施しました。その結果、培養期間中、MazF遺伝子導入細胞では、対象としたCD4陽性T細胞(MazF遺伝子を導入していない細胞)と比較して有為にHIV-1の産生を抑制し、かつ200日という長期間でも、MazFに対して抵抗性を持った耐性ウイルスの出現も認められませんでした。

 

3. MazFの安全性について
MazF遺伝子を導入したヒトCD4陽性T細胞にHIV-1を感染し、6日間培養し、遺伝子導入細胞の機能を調べました。HIV-1感染に伴い、MazFタンパク質が発現しましたが、88種類のT細胞シグナル伝達に関連する遺伝子の発現には全く変動がなく、細胞のサイトカイン産生能も正常であり、MazF発現システムの安全性が示されました。

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

 

【語句説明】

 

HIV

後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因ウイルスです。HIVはレトロウイルス科レンチウイルス属に属します。HIVは変異しやすいウイルスのため、ワクチンや抗HIV薬の開発を阻んでいます。HIVがT細胞などに直接感染することにより、あるいは感染細胞が非感染細胞に融合することにより、体内に広がります。
HIVは血清学的・遺伝学的性状の異なるHIV-1とHIV-2に大別されます。HIV-1は、世界流行の主体となっており、全世界に分布していますが、HIV-2は主に西アフリカ地域に限局しています。これは、HIV-2がHIV-1と比較して感染性や病原性が低いためと考えられています。

 

MazF

大腸菌のトキシンのひとつであり、一本鎖RNA中のACAの塩基配列を特異的に認識して切断する機能を有する酵素です。

 

CD4陽性T細胞

細胞表面マーカーであるCD4が陽性であるT細胞のことです。活性化されたCD4陽性細胞は、他のT細胞の機能を誘導したり、B細胞に抗体産生を誘導したりし、免疫応答を増強します。HIVはCD4陽性T細胞に感染します。