タカラバイオ株式会社(社長:仲尾功一)と京都府公立大学法人京都府立医科大学 消化器内科 吉川敏一教授・古倉聡准教授のグループとは、当社が開発したレトロネクチン拡大培養法を用いたがん免疫細胞療法である「レトロネクチン®誘導Tリンパ球療法」の臨床研究を終了し、主要評価項目である安全性を確認しました。詳細は以下です。

【臨床研究で使用される技術】

当社は、リンパ球の拡大培養時にレトロネクチン®を用いると効率よくリンパ球の拡大培養(細胞を増やす)を行うことができるだけでなく、その増殖した細胞中には未分化な細胞であるナイーブT細胞が多く含まれていることを見出し、国内で既に特許を取得しています(「細胞傷害性リンパ球の製造方法」、特許第4406566号)。このナイーブT細胞は、従来法で拡大培養したリンパ球と比べ、体内で持続的に働くことができるという特徴があるため、レトロネクチン®を使わない従来法と比べて、より高い治療効果が期待されます。

【臨床研究の概要】

対象疾患

標準治療後の残存あるいは再発症例で手術・放射線治療による根治性のある治療の対象とならない消化器がん・肺がんで文書同意の得られた20歳以上、80歳未満でPerformance Status(PS)が0-2の症例

症例数

9例

投与細胞数

1×109個、3×109個、9×109個(各3例、ドーズエスカレーション)

細胞投与回数

2週間隔で2回(被験者の希望により最大6回まで投与)

主要評価項目

安全性

副次評価項目

腫瘍縮小効果

開始日

平成21年4月6日

UMIN試験ID

UMIN000001835

【臨床研究の結果】

1.治療と評価法
対象患者から採血後に分離した末梢血単核球を細胞調製室(CPR:Cell Processing Room)でレトロネクチン®を用いて拡大培養を行う。培養し終えたT細胞を隔週に2回投与し2回目の投与4週後までの有害事象の発生の有無を評価し、抗腫瘍効果はRECISTにより判定した。

2.結果
9例に投与し、重篤な有害事象は認めなかった。治療効果は、完全奏効(CR; Complete Response):1例、部分奏効(PR; Partial Response):1例、安定(SD; Stable Disease):4例、進行(PD; Progress Disease):3例であった。

今般の臨床研究の結果を受け、当社の技術支援のもと、医療法人社団 医聖会 百万遍クリニック(京都市)では、レトロネクチン®誘導Tリンパ球療法の有償治療を本年5月13日より開始します。当社は、百万遍クリニックにレトロネクチン®を用いた細胞加工技術支援サービスを有償で提供します。従来から行っていた活性化リンパ球療法の技術支援サービス及び当該新サービスの売上高は平成23年3月期で1.5億円を見込んでいます。当該売上見込みを反映したうえで、本年5月11日に、平成22年3月期決算短信における平成23年3月期業績予想を発表する予定です。

 

レトロネクチン®誘導Tリンパ球療法の安全性が確認できたため、当社と京都府立医科大学とは共同で、今後も引き続き、他の治療法(ワクチンや温熱療法)との併用療法も含め、レトロネクチン®誘導Tリンパ球療法の臨床研究を進めていきたいと考えています。

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

【医療法人社団 医聖会の概要】

所在地

京都府八幡市八幡五反田39-1

理事長

真鍋克次郎

関連施設

八幡中央病院、京都八幡病院、学研都市病院、百万遍クリニック、介護老人保健施設石清水、特別養護老人ホームゆりのき、訪問看護ステーション梨の里、八幡市乳幼児健康支援デイサービス事業たんぽぽ、精華町病後児保育事業病後児保育室ひまわり、真鍋整形外科医院

【医聖会 百万遍クリニックの概要】

所在地

京都市左京区田中門前町103-5

電話番号

075-791-8202

概要

医聖会が、財団法人ルイ・パストゥール医学研究センター(理事長:片山傳生)より附属診療所の営業譲渡を受け、平成20年4月に開設したクリニック。

ホームページ

http://100manben-c.jp/

【語句説明】

がん免疫細胞療法

がん免疫細胞療法は、患者自身のリンパ球を、自身のがん細胞を攻撃できるように体外で活性化し、その細胞数を増やしてから、患者の体内に再び戻し、がん細胞を破壊に導くというものです。外科手術、放射線治療、化学療法などと比較して、一般的に副作用が少ないと言われています。

 

レトロネクチン®

レトロネクチン®は、当社が開発したヒトフィブロネクチンと呼ばれる分子を改良した組換えタンパク質です。レトロネクチン®を用いたレトロウイルスベクターによる遺伝子導入法は、レトロネクチン法として知られており、レトロウイルスベクターによる遺伝子治療の臨床研究のスタンダードとなっています。さらに、当社はレトロネクチン®の新たな機能として、リンパ球の培養を増強する効果を発見し、レトロネクチン®の臨床応用を進めています。

 

ナイーブT細胞

特異的な抗原により刺激を受け活性化されたことがない未分化T細胞で、血液中を循環し、2次リンパ組織において抗原提示細胞により抗原の提示を受け、細胞傷害性T細胞やヘルパーT細胞などに分化する能力を有しているとされています。

 

Performance Status (PS)

全身状態の指標です。Grade 0~4があり、それぞれ以下の状態(日本癌治療学会 用語集2007年版より引用)を示します。

 

Grade 0 : 無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等に振舞える。

Grade 1 : 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や坐業はできる。例えば軽い家事、事務など。

Grade 2 : 歩行や身の回りのことはできるが、時に少し介助がいることもある。軽労働はできないが、日中の50%以上は起居している。

Grade 3 : 身の回りのある程度のことはできるが、しばしば介助がいり、日中の50%以上は就床している。

Grade 4 : 身の回りのことができず、常に介助がいり、終日就床を必要としている。

 

末梢血単核球

末梢血内に存在するリンパ球と単球の総称です。単球は、免疫反応で重要な役割を担っており、樹状細胞やマクロファージに変化します。

 

RECIST (Response Evaluation Criteria in Solid Tumor)

固形がんの腫瘍縮小効果判定規準を定義したもので、世界中の学会等で広く採用されています。RECISTガイドラインは、大規模な国際共同研究の成果として取りまとめられ、Journal of the National Cancer Institute, 2000, vol.92, No.3, 205-216に掲載されています。

 

活性化リンパ球療法

がん免疫細胞療法の中の一つです。採血した患者自身のリンパ球を、体外でインターロイキン2及び抗CD3モノクローナル抗体を用いて活性化し、その数を増やした後に、患者に輸注するものです。