タカラバイオ株式会社と三重大学医学部附属病院を含む4医療機関が共同で実施を予定している、急性骨髄性白血病等に対するWT1抗原特異的TCR遺伝子治療の臨床研究実施計画が、厚生科学審議会 科学技術部会において了承され、3月22日付で厚生労働大臣からの通知を受理しました。今後、各医療機関内での倫理委員会等の手続きを経て、本臨床研究が開始されます。

 

本臨床研究では、NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「基礎研究から臨床研究への橋渡し促進技術開発事業」(2009年10月~2013年3月)において構築された、多施設の医療機関において共同で遺伝子治療臨床研究を実施する体制が活用されます。さらにNEDO事業として実施してきた食道がんを対象としたMAGE-A4抗原特異的TCR遺伝子治療の臨床研究は、2013年度前半に終了する予定であり、NEDO事業の成果を発展させ、2013年度に国内で治験(開発コード:TBI-1201)を開始する計画です。

 

本臨床研究は、WT1抗原特異的TCR遺伝子治療であり、TBI-1201治験とは使用するTCR遺伝子が異なります。WT1抗原特異的TCR遺伝子治療は、TBI-1201の次の開発候補の一つとして位置付けており、本臨床研究を実施することで、安全性や有効性の評価を進めて参ります。


 

【臨床研究概要】

 

試験名 MS3-WT1-siTCRベクターを用いたWT1抗原特異的TCR遺伝子導入Tリンパ球輸注による急性骨髄性白血病及び骨髄異形成症候群に対する遺伝子治療臨床研究
対象患者 薬物療法等の標準的な治療法の実施が困難である非寛解期の急性骨髄性白血病(AML)、あるいは治療困難な予後不良の骨髄異形成症候群(MDS)
試験実施機関 三重大学医学部附属病院、愛媛大学医学部附属病院、
藤田保健衛生大学病院、名古屋大学医学部附属病院
治療法 患者の血液から採取したリンパ球に、体外で、がん細胞に発現している腫瘍抗原(WT1)を特異的に認識するTCR遺伝子を導入し、拡大培養を行った後、遺伝子導入細胞を患者に輸注する。

主要評価項目 副次評価項目

安全性
血中動態、血液学的効果及び免疫機能解析

 

目標症例数 9例
試験期間 2年間

 

 

【臨床研究に関するお問い合わせ先】

 

三重大学大学院 医学系研究科 遺伝子・免疫細胞治療学講座
Tel:059-231-5684 

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

【語句説明】

 

臨床研究

臨床研究は医師が主体となって実施する研究であり、直接的に商業化につながるものではなく、医薬品や医療機器の商業化(薬事承認の取得)を目的とする場合には、別途、臨床試験(治験)を実施する必要があります。

 

TCR

TCR(T細胞受容体)は、細胞に発現される糖タンパク質で、T細胞が抗原を認識する際の受容体です。腫瘍抗原を含む抗原は細胞内で分解されてペプチドとなり、HLA分子上に提示されます。TCRは、特定の型のHLAにより提示された特定の抗原を認識し、T細胞を活性化します。

 

TCR遺伝子治療

TCR遺伝子治療は、がん患者の血液から採取したリンパ球に、がん細胞を特異的に認識するTCR遺伝子を体外において導入し、培養によって増殖させてから患者に戻すという治療法です。TCR遺伝子が導入されたリンパ球が、患者の体内においてがん細胞のみを認識して攻撃し、消滅させることが期待されます。

 

腫瘍抗原

正常細胞が、がん化に伴って新たに細胞表面上に提示するようになる抗原分子を総称して腫瘍抗原と呼びます。

 

MAGE-A4抗原

MAGE-A4抗原は、腫瘍抗原の一つで、食道がんや頭頸部がん、卵巣癌、悪性黒色腫等での発現が確認されています。

 

WT1抗原

WT1抗原は、腫瘍抗原の一つで、白血病や種々の固形癌にて高頻度で発現していると報告されています。

 

治験

治験(臨床試験)は、医薬品や医療機器の薬事承認を申請するためのデータ取得を目的としています。製薬企業が医療機関に依頼する治験(企業治験)と医師が自ら実施する治験(医師主導治験)があります。治験を実施する際には治験届の提出やGCP(医薬品の臨床試験の実施基準)の遵守などが義務付けられています。