タカラバイオ株式会社は、当社が進めているCRISPR/Cas9システムによるゲノム編集 _{注1、2}の研究開発の成果が、国際学術誌 Scientific Reportsのオンライン版に掲載されましたのでお知らせいたします。概要は以下の通りです。

タイトル

Highly efficient genome editing for single-base substitutions using optimized ssODNs with Cas9-RNPs
(最適化した1本鎖オリゴDNA_{注3}とCas9-RNP_{注4}複合体を用いた
高効率ゲノム編集「1塩基置換導入法」)

掲載誌

Scientific Reports,(2019) 9:4811
https://rdcu.be/brC6C

要約

  • ゲノム編集により塩基置換と呼ばれるタイプの遺伝子改変を行う際に、ドナーDNAとして用いる1本鎖オリゴDNAの設計を最適化することで、目的の遺伝子変異(1塩基置換)を有する細胞を高効率に取得することに成功した。
  • 1本鎖ガイドRNA (sgRNA) およびCas9タンパク質から成るRNP複合体を直接細胞に導入するゲノム編集は、sgRNAおよびCas9を発現するプラスミドDNAによるゲノム編集と比較し、より高効率に目的の1塩基置換を行ったゲノム編集細胞を取得できることを明らかにした。
  •  iPS細胞用培地のCellartis~{®}DEF-CS~{TM}Culture System_{注5}が、ヒトiPS細胞のゲノム編集に必要なシングルセルクローニング_{注6}工程に適していることを示した。

 

 ゲノム編集は、ゲノム上の標的遺伝子を人工的に改変する最新の遺伝子操作技術です。今回の研究成果である最適化した1本鎖オリゴDNAとCas9-RNP複合体を用いた手法は、これまでゲノム編集の成功率が非常に低いとされている、1塩基置換と呼ばれる遺伝子変異を持つ細胞作製において非常に有効です。この手法は、当社のゲノム編集分野の研究用製品や受託サービスで既に利用しており、研究分野から応用分野での幅広い活用が期待されます。

 

 当社は、ゲノム編集をはじめとする最先端の生命科学研究用製品・受託サービスのラインナップの充実を通じ、ライフサイエンス研究を支援し、バイオ産業支援事業の発展を図ってまいります。

 

 

【製品・サービスに関するお問い合わせ先】

 当社テクニカルサポート担当(TEL:077-565-6999)までお問い合わせください。

 

                   

【語句説明】

 (注1) ゲノム編集

人工核酸分解酵素を用いたゲノムDNA上の標的遺伝子改変技術をゲノム編集と言います。細胞内で人工核酸分解酵素を用いて標的遺伝子(ゲノム)のDNAを切断し、それを細胞自身が修復しようとする働きを利用して標的遺伝子を改変します。ゲノム編集は動物、植物、培養細胞などの遺伝子改変が可能なため、基礎研究から食品・医薬品などを対象とする応用まで幅広い利用が期待されています。
 

 (注2) CRISPR/Cas9システム

現在主流のゲノム編集の1つのシステムであるCRISPR/Cas9システムは、“Cas9”タンパク質とRNA分子である“ガイドRNA”の複合体によって、細胞内でゲノムDNA上の任意の領域を正確に切断することで、遺伝子のノックアウト(遺伝子破壊)、ノックイン(外来遺伝子の挿入)、遺伝子塩基置換を行う技術です。

(図)CRISP/Cas9システムによるゲノム編集のながれ
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(図)CRISP/Cas9システムによるゲノム編集のながれ

(注3) 1本鎖オリゴDNA

塩基置換を行う遺伝子(標的部位)と隣接する部位に相同する配列を持つ1本鎖の短いDNAで、相同組換え用のドナーDNAとして利用します。標的部位の両端の長さによりゲノム編集の効率が異なります。

 

(注4) RNP

RNPの細胞への直接導入法は、プラスミドDNAによるsgRNAとCas9の導入法と比較し、細胞への導入直後からDNA切断活性を発揮することから、速やかに標的配列を切断することが可能です。また、RNPは細胞内で速やかに分解されるため、標的配列以外のゲノム上の類似配列の切断(オフターゲット効果)を回避するも期待されます。

 

(注5) Cellartis~{®} DEF-CS~{TM} Culture System

当社が製造・販売している、ヒト由来多能性幹細胞(ヒトESおよびヒトiPS)用の培地です。未分化能の維持力が高く、フィーダー細胞が不要でiPS細胞などのシングルセルクローニングに適しています。

 

(注6) シングルセルクローニング

同一起源、かつ均一な遺伝情報を持つ細胞集団を分離する手法です。細胞をゲノム編集した際には、シングルセルクローニングにより細胞の遺伝的同一性を担保する工程が必須です。

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970