タカラバイオは、2017年5月9日に、2019年度(2020年3月期) を最終年度とする3ヶ年の中期経営計画を策定しました。

タカラバイオ中期経営計画2019の概要

全体方針

「バイオ産業支援事業」、「遺伝子医療事業」、「医食品バイオ事業」の3つの事業部門戦略の推進とこれを支える経営基盤を強化し、グローバル企業かつ再生医療等製品企業としてのプレゼンスを向上させ、飛躍的な成長を目指す。

定量目標

最終年度(2019年度) 売上高385億円 営業利益 40億円

事業部門戦略

  • - バイオ産業支援事業 -
    再生医療等製品関連CDMO事業ナンバーワンを堅持する。
  • - 遺伝子医療事業 -
    日本初の遺伝子医療薬の承認取得をめざす。
  • - 医食品バイオ事業 -
    第2の収益事業として安定的営業黒字を継続する。

タカラバイオグループは、「遺伝子治療などの革新的なバイオ技術の開発を通じて、人々の健康に貢献します。」を企業理念として、基盤技術であるバイオテクノロジーを活用し、「バイオ産業支援事業」、「遺伝子医療事業」、「医食品バイオ事業」の3つの事業を推進しています。

 

本中計では、この3つの事業部門の戦略の推進とこれを支える経営基盤を強化し、グローバル企業かつ再生医療等製品(注1) 企業としてのプレゼンスを向上させ、飛躍的な成長を目指すことを目標として掲げています。

  • (注1) 再生医療等製品
    医薬品医療機等法により医薬品や医療機器とは別に新たに定義されたカテゴリーで、 従来の再生医療で想定される移植用に加工・調製されたヒトの細胞・組織等に加えて、遺伝子治療製品や、細胞治療も含まれます。再生医療等製品については、有効性が推定され、安全性が確認されていれば、条件・期限付きで早期に承認が得られる仕組みが導入されています。

各事業セグメントの計画

1.バイオ産業支援事業

2019年度定量目標

・海外売上高比率60%以上
・CDMO事業売上高45億円以上

※サービスのみ

バイオ産業支援事業では、海外での事業展開を加速させるとともに、国内事業の強化を両立させることで飛躍的成長を目指します。
海外事業は、WaferGen Bio-systems社とRubicon Genomic社の買収による研究開発、製造、販売の各分野のシナジー効果の最大化を図ります。また、グローバルSCM(サプライチェーン・マネジメント)体制を構築し、ワールドワイドな物流・在庫管理システムを整備します。さらに、研究開発では、試薬・受託・機器のそれぞれの分野において、日米欧中の4極体制を強化します。

国内事業では、市場伸張著しいCDMO(注2)事業を軸に事業を拡大します。GMPグレードのベクター製造や品質試験等の受託メニューを中心に売上拡大を目指し、関連技術開発に加え設備等の拡充による製造能力の増強・整備も行います。

各分野の施策概要

研究用試薬分野

オープンイノベーション方式を活用した最先端技術の迅速製品化

受託サービス分野

再生医療等製品関連受託、およびクリニカル領域受託拡大のためのGMP/GCTPsup{(注3)} 、CAP-LAPsup{(注4)} 等の品質保証、精度管理システムに準拠した体制整備

理化学機器分野

機器と試薬類との組み合わせによる、システム化したシングルセル解析sup{(注5)} やPCR関連製品の開発

バイオ産業支援事業の研究開発の注力分野

  1. 再生医療等製品の基盤技術開発・品質管理手法の確立
  2. 超微量核酸解析法の開発
  3. クリニカルシーケンスに必要な新規技術開発
  4. PCRの産業利用・クリニカル領域への展開
  5. 新規ゲノム編集関連技術の開発
  • (注2) CDMO
    Contract Development and Manufacturing Organizationの略です。
    バイオ医薬品や再生医療等製品の開発・製造支援サービス業のことを指します。
  • (注3) GMP/GCTP
    GMP:Good Manufacturing Practiceの略で、医薬品を製造する際に遵守すべき「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準」を指します。GMPは、安全で品質が担保された医薬品を供給するため、医薬品の製造時の管理、遵守事項を各国の規制当局が定めたものです。
    GCTP:Good Gene, Cellular, and Tissue-based Products Manufacturing Practiceの略で、「再生医療等製品の製造所における製造管理及び品質管理の基準」を指します。
  • (注4) CAP-LAP
    CAPは米国の品質マネジメントシステムツールの提供・検査室認証及び教育などを主な業務としている学会です。LAPはCAPにより毎年実施されている世界最大規模の国際的な臨床検査成績評価プログラムを指します。臨床検査室の設備等のハード面と臨床検査室を運営するソフト面が査察の対象となります。
  • (注5) シングルセル解析
    細胞集団の平均的な解析ではなく、1細胞レベルで遺伝子解析などを行うことです。

2.遺伝子医療事業

2019年度事業目標

HF10の国内上市

 

遺伝子医療事業では、「自社単独開発プロジェクト」と「提携プロジェクト」を明確にし、「選択と集中」により早期の遺伝子治療薬の承認取得をめざします。

■自社単独開発プロジェクトの計画

2018年度にHF10プロジェクトの上市を実現し、「再生医療等製品企業」として第一歩を踏み出し、2020年度には複数製品の上市を目指します。治験を計画通りに推進し、上市後の製造を確実に行うための薬事・製造面での体制整備を行います。

自社単独開発プロジェクト 対象疾患 現状 上市目標
Oncolytic
Virus
HF10 日本 悪性黒色腫 第Ⅱ相
臨床試験
進行中
2018年度
(当中計期間)
Engineered
T cell
Therapy
siTCR NY-ESO-1 日本 滑膜肉腫 第Ⅰ/Ⅱ相
臨床試験
治験届提出済
2020年度
(次期中計
期間)
CAR CD19 ・CAR 日本 成人ALL* 第Ⅰ/Ⅱ相
臨床試験
進行中
2020年度
(次期中計
期間)

*ALL:急性リンパ芽球性白血病

■提携プロジェクトの計画

HF10国内プロジェクトの提携を確実に推進します。
具体的には2017年度中に開始予定の膵臓がんの国内臨床試験等の完遂を目指します。
その他のプロジェクトについても海外を中心に新たな提携パートナー選定を進めます。

提携プロジェクト 対象疾患 現状
Oncolytic
Virus
HF10 日本 膵臓がん 第Ⅰ相臨床試験 開始準備中
米国 メラノーマ 第Ⅱ相臨床試験 進行中
第Ⅲ相臨床試験 計画中
Engineered
T cell Therapy
siTCR NY-ESO-1 日本 食道がん
など
第Ⅰ相臨床試験 進行中
MAGE-A4 日本 食道がん
など
第Ⅰ相臨床試験 進行中
CAR CD19 ・CAR 日本 小児ALL 計画中

3.医食品バイオ事業

2019年度定量目標

・売上高27億円、営業利益2.5億円以上

医食品バイオ事業では、健康食品事業・キノコ事業の黒字化を盤石なものにし、 継続的に利益を拡大することを目標とします。

■健康食品事業

6つの機能性素材に特化した、研究開発(ヒト介入試験等) を推進し、研究データに基づく研究開発成果の情報発信(研究広告等) を積極的に行います。また、宝ヘルスケア社と緊密な連携をはかり、同社の販売計画に対応した製品の安定供給体制を構築し、宝グループの健康食品事業の拡大に貢献します。

開発中の6つの機能性素材
ガゴメ昆布「フコイダン」 寒天「アガロオリゴ糖」
明日葉「カルコン」 ボタンボウフウ「イソサミジン」
ヤムイモ「ヤムスゲニン」 キノコ「テルペン」

■キノコ事業

本しめじ、はたけしめじ、ぶなしめじの3種のキノコ製品それぞれの市場に応じたブランド戦略を展開し、市況に左右されない安定した収益基盤を確立します。特に、本しめじでは「香りまつたけ、味しめじ」と言われる高い価値感を訴求・情報発信し「京のブランド産品(注6) 」認証を活用したブランド構築を行うとともに、冷凍キノコの販売にも注力します。

  • (注6) 京のブランド産品
    京都の伝統野菜など歴史に磨かれた特徴ある農産物をはじめとして、品質が特に優れていると京のふるさと産品協会が認証した京都府産の農林水産物とその加工品です。