タカラバイオ株式会社は、このたび、国立大学法人三重大学医学系研究科の珠玖洋 特定教授らのグループ(以下、三重大学)と、新規CAR_{注1}遺伝子治療に関する共同研究を開始しました。

 

 CAR遺伝子治療は、免疫細胞であるT細胞に、がんに対する攻撃性を高めるCAR遺伝子を導入した遺伝子導入細胞を作製し、患者に投与する治療法です。CD19CAR遺伝子治療_{注2}はCAR遺伝子治療の一種で、一部の血液がんに対し非常に高い治療効果が示され、米国・欧州・日本では、当局により製造販売が承認されています。

 

 本共同研究では、CAR遺伝子治療の課題と言われている、治療効果の持続性向上(再発防止)、血液がん以外の固形がんに対する適応拡大に焦点をあてます。具体的には、CAR遺伝子の、①がん抗原などを認識する「抗体ドメイン」、および②攻撃性に関与する「シグナル伝達ドメイン」の2つの機能ドメインに係る遺伝子構造を改変し、その効果を細胞や動物レベルで検証します。研究にあたっては①についてはCEA(固形がんでの発現が顕著ながん抗原)_{注3}を認識する抗体ドメインの効果、②については、当社と三重大学の独自技術であるGITR(T細胞の寿命延長や攻撃性持続に係るタンパク質)_{注4}の効果などを確認する予定です。

 

 当社と三重大学はこれまでにNY-ESO-1・siTCR~{®} _{注5}遺伝子治療の開発を共同実施した実績があります。このたびの新規CAR遺伝子治療についても協力して開発を進める予定です。

 

 当社は、CAR遺伝子治療などのがん免疫遺伝子治療の開発や社会実装を通じ、未充足な医療ニーズの解決に取り組んでまいります。

 

参考資料

【参考図】

 

 

             (左)承認されているCAR遺伝子治療(CD19・CAR)のCAR構造
             (右)共同研究で検証予定の独自CAR構造の例

 

 

【語句説明】

 

(注1) CAR(キメラ抗原受容体)

がん抗原を特異的に認識する抗体ドメインとT細胞受容体の細胞内シグナル伝達ドメインを遺伝子工学的に結合させて作製した、がん抗原を特異的に認識できる受容体です。

 

(注2) CD19・CAR遺伝子治療

がん免疫遺伝子治療の一種です。多くのB細胞性リンパ腫のB細胞の表面に発現しているCD19というタンパク質(抗原)を特異的に認識するCAR(キメラ抗原受容体)の遺伝子を、患者由来のT細胞に体外で導入し、再び輸注することにより治療を行います。現在、当社は日本国内において、大塚製薬株式会社と共同して成人の急性リンパ芽球性白血病を対象とした第I/II相臨床試験を実施中です。

 

(注3) CEA(がん胎児性抗原)

大腸がん、肺がん、食道がんなどの固形がんに発現するがん抗原として知られています。

 

(注4) GITR(グルココルチコイド誘導腫瘍壊死受容体)

T細胞などの免疫細胞に発現する受容体です。GITRによる細胞内シグナルの伝達は、T細胞を活性し、がんなどの異物への攻撃性を増長するとともに、T細胞の寿命を延長すると言われています。CAR構造のシグナル伝達ドメインにGITRを用いるのは当社と三重大学が独自に開発した技術です。

 

(注5)NY-ESO-1・siTCR~{®}遺伝子治療

がん免疫遺伝子治療の一種です。滑膜肉腫、悪性黒色腫、食道がん、卵巣がん、多発性骨髄腫、頭頸部がんなどにはNY-ESO-1と呼ばれるがん抗原が腫瘍組織に発現しています。患者由来のT細胞に、NY-ESO-1を認識するTCR遺伝子を体外で導入し、再び輸注することにより治療を行います。当社では、TCR遺伝子を導入する際に、三重大学と共同で開発したsiTCR~{®}ベクター技術を用い、患者由来T細胞の内在性TCRを抑え、目的のTCRが効率的に発現するようにしています。現在、当社は日本国内において、大塚製薬株式会社と共同で滑膜肉腫を対象とした第I/II相臨床試験を実施中です。

 

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 事業管理部
Tel 077-565-6970